3走向きの脚質、チームスプリント

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世界選手権、そして競輪

Q:世界選手権という大舞台を経験したことで、日本の競輪に活かせるものはありましたか?

もう生半可なレースじゃ緊張しないと思います。リラックスして臨めそうな気がしますね。これまでもガチガチに緊張するタイプではなかったんですが、軽くパニックになる部分がたまにあるので……気持ち余裕を持てそうだと思います。

Q:寺崎選手が混乱するのはどういう時ですか?

やっぱり、作戦通りの並びや位置を取れない時ですかね。戸惑ってしまいます。

Q:競輪を走っている時って、頭をフル回転させているのか、感覚で位置を取りに行くのか、寺崎選手はどちらですか?

頭を使うのは最初だけですね。レースが始まって位置が決まったら、あとは集中して行くところを感覚で行くだけです。

これは人によって違うことだとは思います。位置取りの上手い選手は「ここでこの展開になったらこの選手がこう動いて……」と考えていると思います。でも僕なんかは「行くところで行って、どうなるか」という感じですね。

Q:寺崎選手から見る「位置取りの上手い選手」って、例えばどなたですか?

同期の山口拳矢(岐阜・117期)とかは位置取りが上手いです。あとは山田英明(佐賀・89期)選手とか。毎回良い位置にいるなあとすごく思います。

山口拳矢

位置取りは競技のケイリンの方がより重要になるかと思います。250mのバンクだと外を回って捲るのは難しくなるので、有利な位置で展開する必要があります。もっと鍛えていかなくちゃなと思っている点ですね。

Q:それは感覚的な部分を強めるのか、事前の作戦立てを強化するのか、どちらでしょう?

感覚的な部分ですね。競技は6人がバラバラの動きをするので、事前に予想ができないような展開になることも多いです。一瞬の判断でどんな動きができるのか、が大事になります。

日本の競輪だとラインがあります。それによって動ける選手が3人とか4人とか、ある程度固定されるので、競技の方がより判断力が必要になりますね。これにはやっぱり、経験が必要です。

Q:ナショナルチームの練習ではケイリンのレース形式の練習はしないと伺っています。

そうですね。レースの練習もできたらいいなと思うんですが、数ヶ月に一度模擬レースをするくらいです。ナショナルじゃない、競輪選手の皆さんは、レース形式の練習もよくやるそうです。

レベルアップを感じた1年

Q:では、2021年を振り返っていただく質問をしていきたいと思います。この1年で最も変化したことって、どのようなことでしょうか?

競技ではフィジカル(筋力)がちょっとずつついてきて、ハロンのタイムも9秒9から9秒7まで上げることができました。しっかり成長できた1年だったと思います。

Q:これまでがレベル50で、最大レベルが100だとして、この1年でレベルいくつになった感じでしょう?

……70くらいですかね。練習量が変わったわけではないんですが、これまで積み重ねてやってきたことが、ここで開花した感じです。ウェイトして、フィジカルついて、しっかりギアが踏めるようになって、タイムにつながったのだと思います。

Q:日本の競輪ではどうでしょう?

今年は先行の本数を増やして、主導権を取るレースをしてきました。結果は……正直あまりついてきていないんですが、平均しての走りは良くなったと思います。

例えば3着まで勝ち上がりのところを4着で終わってしまって、惜しい結果ではあるんですけど、しっかり先行してのこの着、みたいな走りです。自分の中では価値のある走りだと思っていますし、成長できた部分だと思います。

Q:今年はご結婚もされましたが、それに伴って環境は変わったんでしょうか?

今年の初めから一緒に住んでいたので、あまり変わりはないですね。食事面などでサポートしてもらうこともあり、助かっています。それがフィジカルの強化にも一役買ってくれたと思います。

Q:そういえば、寺崎選手は栄養系もよく気にしてるそうですね。今年その辺りで何か新しい発見はありましたか?

そうですね、これまではサプリメントに頼る部分が多かったんですが、食事で栄養を摂ることでより効果が高まるんだなと実感しました。体調が良いなと感じることが多いです。

世界選手権が開催されたフランスでも、質素な感じではあるんですが、最低限の栄養は摂れていたかなと思います。メインと副菜くらいしかなくて、メインを取らないと何も食べるものがない、みたいな状況にもなりかねなくて……そういう部分は持参したレトルトの食品で代用していました。米は2キロ持っていきました。

若手No.1が決まる「ヤンググランプリ」

Q:ヤンググランプリについて伺っていきます。出場選手として選出されましたが「これを目指してやってきました!」という感じか「目の前のものを頑張っていたら選出された」という感じか、寺崎選手の感覚としてはどちらでしょうか?

一戦一戦をやってたらこの結果につながった、という感覚です。ヤンググランプリは、競輪人生の中でも多くて2回しか出られないレースです。とても貴重な体験になると思うし、このメンバーで走ることはもうほとんどないと思います。同期対決も多くなりますし、意地の張り合いとかも見えそうで、面白い位置付けのレースになると思います。

Q:ヤンググランプリのメンバーで、意識しているのって誰ですか?

町田(太我)と(山口)拳矢……拳矢はもしかしたらKEIRINグランプリの方に出るかもしれませんが、同期の2人が気になりますね。ナショナルの小原選手もいますが、それよりは普段競輪を走っているメンバーの方が「怖さ」があります。

町田大我

Q:怖さというと、経験の豊富さとか?

僕は今年、競輪の出走本数も少ないので……鉄のフレームへの慣れもありますね。今、競技の方のフレームでポジションを大幅に変えていて、その上1ヶ月くらい競輪のフレームに乗っていないんです。同じ自転車でも感じ方が全然違ってしまいますね。

Q:寺崎選手が一番感じる「ケイリンと競輪の違い」ってどんな部分でしょうか?

横の動き(他の選手を牽制するような動き)の有無が一番の違いだと感じますね。僕は全然得意じゃないです(笑)

ナショナルの選手たちは、横の動きをする必要がない戦法の人が多いです。前に出切ってしまえば、そのまま行くだけ。「出切れるか、出切れないか」の勝負になりますね。

Q:寺崎選手自身もそんな感じでしょうか?それはヤンググランプリのメンバーでも?

「前に出ちゃえば一安心」感はあります。ヤンググランプリでも、仕掛けどころさえ間違えなければ、前に出てもしっかり残れると思います。比較的長くもがける方だと思いますし……

Q:山口拳矢選手はどのように見ていますか?先ほど「位置取りが上手い選手」として挙げていらっしゃいましたが。

全然競走スタイルが違う選手なんですが、同期としてとても気になりますし、刺激を受ける選手です。117期であそこまで位置取りする選手も、やっぱり拳矢くらいだと思います。

山口拳矢

Q:去年のヤンググランプリの優勝は松井宏佑選手でした。同じナショナルのチームメンバーとして、それに続きたい気持ちはありますか?

そうですね、やっぱり出るからには勝ちたいです。あとヤンググランプリで優勝すると、次のサマーナイトフェスティバルを特選でスタートできるんです。恩恵がすごいので、獲れるなら獲りたいです。

競輪祭に向けて

Q:では、その直前レースとなる競輪祭が間も無くスタートします。どのようなレースをしていきたいか教えてください。

「今年は主導権を取る」と決めているので、しっかり主導権を取っていきます。今年は準決勝が壁になっているので、そこに乗れるようにがんばりたいです。

Q:脇本雄太選手が欠場になってしまい、残念ですね。

そうですね、すごく残念です。近畿の自力選手は今回あまり多くないので、しっかり先行してラインに貢献できるようがんばりたいです。