全ては2016年から始まった

2/3 Page

前例のないやり方 コーチの方が速い

選手とコーチとのやり方、教える側と教えられる側にはさまざまなスタイルがある。その中でも日本の選手が未経験だったことを実施したのがブノワヘッドコーチだった。口も、身体も使って選手を指導していく。

「僕が一番『すごいな』と思ったのは、合宿で海外に行った時のことです。コーチも選手に混ざって練習をして……それが僕にとっては一番衝撃的でした。それまでの競技生活だったら考えられない状況です。

口での説明で伝わりきらない時、ブノワコーチは自分で『見ていろ!』ってやって見せてくれるのです。これにはみんなが衝撃を受けたと思います。深谷(知広)は『俺よりスタートが速い……!』と驚愕していました。それ以降、ブノワの指示にはみんなが納得するようになったと思います。実際にテクニックがある。それはとても大きかったです」

ブノワ・べトゥ

走る時はいつも万全の準備で臨むブノワコーチ

このコーチは口だけではない。その衝撃はチーム全体に響き渡った。

体現することにで理論を正当化させる。そんな芸当ができるコーチは世界でもわずかだ。自分が出来るから人にも教えられる、ブノワコーチの言葉には説得力があった。

なぜ僕はこの成績を収められている?

脇本はブノワコーチの指導の元、2017-18シーズンのワールドカップ第4戦チリ大会でのケイリン優勝、次ぐ2018-19シーズンのワールドカップ第1戦フランス大会でのケイリン優勝、東京2020オリンピック前哨戦となった2020世界選手権では、ケイリン準優勝。加えて国内の競輪では“異次元”と言われるまでに強くなった。

世界を狙える位置まで上ったが、以前はチームとして纏まっていなかった期間を経験してきた。だからこそ、東京を目指すチームに対して、感謝の意を常に持つ。

「僕は前回のリオを知っているから分かるのだと思いますが、何も体制ができてないところで色々やって、ブノワがいて、スタッフが増えて、環境の変化を実感しながら練習してきました。これはナショナルチームで長く過ごしている他の選手も同じだと思います。

過去を知っているからこそ、今の環境をありがたく思って、頑張らなきゃと。だから僕の場合は『期待に応えなければならない』という意識が強いです。『なんで僕は大会でこういう成績を収めることが出来ているの?』と自問自答する感じです」

現在HPCJCは体制がしっかりと整い、自分がトレーニングに集中できる環境がある。

常駐してくれているコーチ陣をはじめ通訳、マッサー、理学療法士、栄養士、メカニック、サイエンスチームなど周りのサポートをしてくれるスタッフが数多くいる。この体制が如何に素晴らしいことなのかは、過去を知っている選手でなければ分からないことかもしれない。

自分が強くなるために周りが動いてくれている。その意味をしっかりと理解しているからこそ、強くなるのは選手に課された義務という捉え方だ。

最後は「自己中」で良い

2/3 Page