最後と決めたから

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戦う気持ち

7-12 Final / Men's Keirin / 2020 Track Cycling World Championships, Nitta Yudai 新田祐大, Matthijs Buchli マティエス・ブフリ, Jeffrey Hoogland ジェフリー・ホーフラント

2018年シーズン、ブノワに「力を解放するキーを探すこと」を課題とされた新田祐大だったが、あらゆるプレッシャーを跳ね除け、2019年には世界選ケイリンで銀メダルの結果を出した。ワールドカップや世界選で結果を出したことが「やっとナショナルチームの一員となれた」という安心感を生んだと新田は語る。

そして今、おそらく新田は”完全解放”の状態だ。

新田はこの東京オリンピックまでの5年間を振り返って、体の面でも、成績の面でも、精神的な面でも、さまざまな変化があったと話した。

新田祐大

「最初は『苦しい』から始まって、体の変化に繋がって成績が好調になって、その次に不調になって。また好調になって、今現在という感じです。

ここでの変化には、精神的な部分と肉体的な部分、両方含まれています。やっぱり精神的な部分が崩れてしまうと、肉体的な部分が準備できていても戦えないですし、肉体的な準備ができてない時に精神的に崩れてしまうと、まったく駄目になってしまう。

なので、必ずこの『精神的な部分』だけは崩さないように、何とか頑張ってやり続けたました。その結果、成績の面においても好調で居続けることができていると思うので、この気持ちをオリンピックが終わるまで維持して、なんとか持ちこたえたいなと思っています」

少年時代にテレビで見た”オリンピック”の衝撃は、今でも薄れることなく残っている。幼い頃から持ち続けた漠然とした夢は、浮き出るほどに明確な目標となっていた。新田が目指すのはケイリンでの金メダルだけでない。出場するスプリントにも狙いを定める。

新田祐大,男子スプリント,Mens Sprint, TISSOT UCI TRACK CYCLING NATIONS CUP - HONG KONG

「僕としては、もう捨てるものはなくて。目指せるものは全て目指していきたいと思っています」

2か月前には、東京オリンピックで走るということ、新田はそのイメージを頭の中で繰り返し作り出していた。

「常に、戦う気持ちというのは何なのか、戦うために今までやってきたことは何なのかを考えています。その結果というよりは、自分がどうやってスタート位置に立つかを。

『スタートしたら、ゴールに向かってどういうふうに突き進むべきなのか』とだけを考えて、それをリハーサルすることですね。それを繰り返すことが、結果に繋がると思うんで、しっかり日々を大事に過ごしたいなと思っています」

東京オリンピック トラック競技代表内定発表 ブノワ ベトゥ

2020年の世界選で選手たちのことを「勝つために全てを懸けた侍たち」とブノワは表現した。

5年前にブノワが植えた種は、”優勝するという精神”。東京オリンピックまでのこの期間で、選手だけでなくスタッフ全員の根幹となった。

個人の努力のみでなく、日本史上最高の”チーム”として、勝利へ向かって突き進む。

中長距離チーム、第一章の集結

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