「自転車で親孝行をする」道が現れた
Q:自転車に関わってからどう人生が変わりましたか?
高校2年生の時に国体があって、そこで優勝できたんです。
当時は家庭の環境が良くなくて、貧しい生活だったのですが、優勝したことで「競輪選手」という道が見えたことが、一番の変化でした。自転車で走りながらお金も稼げて、母を助けることができますから。
Q:国体での優勝を成し遂げた時の気持ちは?
まさか優勝出来るとは思っていませんでした。驚きが最初、嬉しさはその次でした。
Q:自転車競技をやっていて、一番辛かった時を教えて下さい
肉体的な辛さと、精神的な辛さのそれぞれがあるんですが、肉体的に辛かったのは、競輪学校(現:日本競輪選手養成所)のころです。体力的なトレーニングが圧倒的に多くて、本当にこれで良いのかな?と思う時が一番しんどかったです。
Q:どうやってその時期を乗り越えたのですか?
僕は「早く稼いで親孝行をしたい」という気持ちが強く、それ一心という感じでした。
一度は諦めたオリンピック
Q:では、精神的に辛かったのはいつでしたでしょうか?
一緒にオリンピックを目指していた母が、病気で倒れた時です。
Q:その時期にロンドンオリンピック(2012年)を諦めましたよね。
そうですね。ちょうど母親が亡くなる1週間くらい前に、大会の選考をすると言われました。そのとき、とても戦える状態じゃなかった。「選考基準が変わっても、僕はやりたくない」。そんな気持ちでした。
Q:そこからリオオリンピックに戻ってくるわけですが、どんな気持ちの変化が?
心が折れている中でロンドンオリンピックを観て、「また競技をやりたい」と思いました。
僕はたくさんの人の応援、想いを背負っていますが、最終的に決めるのは自分の心だと思っています。オリンピックに出場したい、母のためにもメダルを獲りたいという「執着心」が、今の僕の中でとても大きな存在です。