自転車トラック競技日本ナショナルチームを支え、かつ次世代選手の育成にも力を入れるために日本自転車競技連盟が立ち上げたHPCJC(High Performance Center of Japan Cycling、以下「HPCJC」)。コーチ、メカニック、ドクター、トレーナー、科学分析班といった様々なスタッフが揃っており、選手を多角的な視点から分析し、支え、さらなる高みへと引き上げるためのプロフェッショナル集団だ。

ナショナルチームがトレーニングするHPCJCには、フランス出身のブノワ・ベトゥ短距離ヘッドコーチを筆頭に、ニュージーランド出身のクレイグ・グリフィン中長距離ヘッドコーチ、オーストラリア出身のジェイソン・ニブレット短距離コーチ、スペイン出身のミゲル・トーレスHPCJCディレクター・・・など、世界中から屈指の専門家たちが集結。伊豆の山奥に小さなコスモポリタンが形成されている。

そのコスモポリタンの潤滑油となり、物事をスムーズに進めるための鍵を握る「通訳」の仕事。今回は世界各国から来ているスペシャリストと選手たちの架け橋となっている、アリス・ボナミさん(短距離チーム通訳)に話を伺った。

アリス・ボナミ

フランス出身。京都府庁にて国際交流員として5年間勤務。酒造会社勤務を経て、2017年5月から日本ナショナルチームへ。日本には既に10年在住。短距離チームの通訳として活躍している。ブノワコーチのフランス語と、ジェイソンコーチの英語、そして選手の日本語を同時通訳するスキルの持ち主。

このチームに関われたのは偶然

Q:どのような経緯で、通訳としてチームに入ったのでしょうか?

以前は京都府庁の国際課で働いていたのですが、5年の満期で職場を離れました。その後、日本酒を輸出する酒造会社で正社員として働いていました。京都と日本酒が好きだったのが理由です。

そんな時、クラシックカー好きの父が、私に会いがてら『Yokohama Hot Rod Custom Show(横浜にアンティークやカスタム車が集まるイベント)』を目当てに来日しました。本当に偶然ですが、その際に父とブノワコーチが出会ったことが、チームに関わるきっかけでした。運が良いことに、ちょうどそのタイミングでブノワコーチが通訳を探していたのです。

当時は京都が「心の故郷」となっていて、離れるなんて考えられませんでした。でも人生で1度きりのチャンスだろうし、人と関わることは大好きだし、その上この国でオリンピックが開催されます。「きっと有意義な経験になる」と家族全員に言われたことも後押しし、伊豆まで話を聞きに行きました。

それが2017年の3月だったと思います。自転車については素人でしたが、実際に少し仕事をしてみた上で、ブノワコーチや周りのスタッフからオファーをいただきました。様々な縁を感じましたし、この仕事に挑戦してみようと決心しました。

日常会話で使わない言葉が多い

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