「競輪」がもたらす光と影

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「競技と競輪の両立」は可能か?

第36回共同通信社杯, 伊東温泉競輪場

Q:HPCJCで行っているトレーニングに興味がある、と言う競輪選手の声も聞きます。

「興味がある」と言う人たちは増えていると感じますが・・・その言葉の裏には「もっと稼ぐために」という気持ちがあるのが大半だと思います(笑)ちょっと複雑な気持ちですね。

私たちは競輪で結果を出してお金を稼ぐためではなく、競技で結果を出すためにトレーニングをしています。結果として競輪で活躍するパターンはありますし、HPCJCで活動するのにもお金がかかりますから、稼ぐことは必要ではありますが・・・。

競輪と競技両方で活躍したいと思うのは結構です。でもHPCJCは「選手をトレーニングすること」が目的ではなく、「選手に競技で良い結果を出してもらうこと」が目的の場所です。ですから成績が出なければずっとBチームのままですし、いずれはチームからサヨウナラをすることになるでしょう。

もちろん、競輪の大きな開催で勝ってくれると嬉しく思いますし、それが成功の証拠だとよくわかっています。日頃の練習の結果が出たと思うと喜ばしいです。けれどもわたしは競技で成績を出す、そのために雇われているので、目的はブレません。優秀な競輪選手とナショナルチーム/HPCJCの選手がイコールなら、私がここにいる意味はありません。

Q:優秀な競輪選手は競技でも勝てる、とはありえないことでしょうか?

「競技に重きを置いていない選手」のことですね。「競技で勝ちたい」という気持ちがない以上、国際大会で勝つことはできないと思います。ものすごく素晴らしい才能で、意図せずどちらもできてしまう・・・というパターンも可能性としてはありますが、まだ見たことはありません。

Q:一方で「競輪」というシステムは、日本の自転車競技の大きな強みでもあります。なので両立できれば良いのですが・・・

そういうことも考えて、アカデミー(Bチーム)を作ったんですよね。「競技と競輪を両立できる」ということを証明していくために。

競輪は自転車競技でありながら、仕事でもありますから、両立は難しいことだと思います。でもこの問題については徐々に解決していきたいと考えています。例えば脇本(雄太)は競輪でも活躍し、2020年までの3年間でたくさんの収入を得て、競技と競輪の両立ができることを証明してくれました。

もちろんそれは簡単なことではありません。一握りのトップ選手にしかできないことで、私たちはそんな選手たちに毎日尽くしています。だからもっと一般の選手たちにも、これが可能になるようにしていかなければなりません。

これは最も美しいプロジェクト

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