昨シーズンの振り返りと戦友の引退

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ナショナルチーム内の「真ん中の立場」として

Q:6月に東京オリンピックの代表選手が発表されましたが、深谷選手は補欠となりました。正代表に選ばれなかった、オリンピックがそもそも開催できるか・・・など、いろいろな理由でモチベーションを保つのが難しい部分があると思います。そのあたりをどのようにコントロールしていますか?

東京オリンピック日本代表、新田祐大・脇本雄太・梶原悠未ら6人

「モチベーションが下がる」というよりは「高いモチベーションをキープするのが難しい」という感じです。シーズン中は100%を超えたようなモチベーションになるんです。3月に世界選手権が終わって、そこから7月のオリンピックまで120%をキープしたまま突入するつもりだったんですが、それはできませんでした。大会がない中で120%のモチベーションを来年までキープするのは難しいです。

Q:シーズン中の張り詰めた感じが1年続くとなると、正直厳しいですもんね。

そうです。今は適度に落として、楽しんでいる感じです。そうは言っても120%から落として100%くらいではあります。

思いっきり「嫌な動き」をしてやろうかと

Final / Men's Sprint / TISSOT UCI TRACK CYCLING WORLD CUP IV, Cambridge, New Zealand, 深谷知広

Q:練習中に深谷選手の得意とするスプリントでナショナルチームのメンバーと少なからず勝負をするような機会はあると思います。そのような機会は楽しみですか?

仲間内のレースだと、正直そこまでワクワクはしないですね。本番の大会ではできないことを試してみようかな、とは思っています。

オリンピックまでは新田さんとワッキーの「オリンピックのための練習」となります。ただ本番のようなレースを行うとしたらナショナルBチームにとっては唯一のアピールの場にはなりますね。だからBチームの選手たちはかなり力を入れて挑んでくるはずです。そのタイムや結果をもって、今後の大会への出場メンバーを決めていくので。

そんな中で自分は「東京オリンピックには出場しないけれど、スプリントでの立ち位置をある程度確立している」という、真ん中の立場なんです。うまく両方をかき回して、良い練習台、邪魔な存在になってやろうと思っています。

新田さんとワッキーとスプリントで勝負するなら、めちゃくちゃ嫌な動きをしてやって、苦しめるだけ苦しめてやるつもりでいます(笑)もう勝つ負けるじゃなくて、嫌な動きをして困らせて、それがオリンピックの結果に繋がれば良いなと。

パリオリンピックまでは3年”しか”ない

Q:深谷選手はパリオリンピックを目指すと公言されています。スプリントでは世界においてもかなり立ち位置を確立したと思うのですが、可能性を広げるためにスプリント、チームスプリント以外の種目にも注力するということはあるのでしょうか?

チームの方針次第ではありますが、ほぼないですね。走りたいという積極的な気持ちはないです。

Q:深谷選手から見て、Bチームのメンバーたちはどんな風に見えていますか?

(本人たちから)話を聞くと「気持ちを高めようにも高められない」といった風に感じられます。昨シーズンでナショナルBチームからワールドカップを走ったのは小原佑太松井宏佑(松井選手は現在Aチーム)だけで、他の選手は1回も海外で走っていないんです。

Repechage / Men's Keirin / TISSOT UCI TRACK CYCLING WORLD CUP II, Glasgow, Great Britain, 小原佑太

小原佑太

松井宏佑 Final / Men's Keirin / TISSOT UCI TRACK CYCLING WORLD CUP I, Minsk, Beralus

松井宏佑

パリオリンピックに対する野心を持とうにも、どう持てば良いかわからないんじゃないかと思います。それに東京オリンピックからパリオリンピックまでは3年しかないですから、厳しい状況になると思っています。

Q:やっぱり3年間「しか」という表現になるんですね。

そうですね。出るだけなら誰かはパリに出られると思います。でもオリンピックで本当にメダルを狙うなら、1シーズン目で手応えを掴んで、2シーズン目でメダル争い、3シーズン目に優勝争い・・・そんなステップを踏むと考えると、今の東京オリンピックの出場争いをしているくらいでないと厳しい。Bチームにはオリンピックの出場争いに加わった選手が1人もいないので・・・

Q:東京オリンピックが終わると、年齢的にも実績的にも、おそらく深谷選手が短距離ナショナルチームのリーダー格になると思います。今の段階で「なんとかして他の選手たちを引き連れて行きたい」のような気持ちはあるんでしょうか?

はい。うまくコーチと選手の間に入って、立ち回れるようにしたいです。

Final / Men's Team Sprint / TISSOT UCI TRACK CYCLING WORLD CUP V, Brisbane, Australia, 深谷知広

2019-20シーズンのトラック短距離チームを何度も沸かせてくれた深谷知広選手。今の彼が見据えるのは東京オリンピックではなく、その先。トラック競技者として頂きを目指す深谷選手の物語はパリでクライマックスを迎えることになるだろう。果たしてどんなドラマを魅せてくれるのか、その内容に期待しようではないか。