自転車競技は1番の趣味。

橋本英也にとって、オムニアムとは何か?を問うと、少し間を置きつつも、屈託のない笑顔でこう答えた。

「輝ける、自分を輝かせる場所?というか。1番ではなく、1つの場所ですね。やってて楽しいですよ。」

楽しい、というのが本心だと一目でわかる表情だ。

世界選手権のレース中、緊張感の漂うピットでさえ橋本英也はカメラへ気づくと笑顔を向けてくれる。レースの最中でさえ、勝利を狙う眼差しからは楽しんでレースをしている様子が伺える。

「やっぱり楽しむことが、1番パフォーマンスが出ると思っているんです。楽しくなかった時は全然走れないですし。レース前も緊張するというよりは“うおー!行くぜ!!”みたいな感覚でした。」

人生を賭して、趣味を極める。

では、橋本英也にとっての自転車競技とは何か?

「趣味ですね。1番の趣味です。車も好きなんですけど、自転車が1番です。」

日本代表の短距離チーム、同じ競輪選手の深谷知広も同様の言葉を語っていた。楽しいからやっている、楽しいからとことん極めたい。彼らは己の人生を賭し、趣味を極め続けている。

趣味と言うと遊びでやっている様に聞こえるかもしれないが、彼は自分が求める最高の人生を送るためには、代償として捨てねばならない様々なモノ、並々ならぬ努力と行動力が必要だ。

趣味を職業にし、生活の糧を得る事がいかに難しい事なのか?大人になれば誰もが痛感する事だろう。

そこには果てしなく泥臭い努力が確実に存在する。しかし橋本英也はそれを見せない。それどころか、あくまで自然体で日々を楽しんでいる。

「練習している時はキツイですけど、ロードで堤防沿いを走っていた時に陽が傾き始めたら、気持ち良い風が吹いてきて“うわぁ〜すごい気持ちいな〜”っていうの、僕は好きですね。」

人生には感動を覚える瞬間が多い方が楽しいに決まっている。橋本英也の言葉は、そんな当たり前の事を気づかせてくれた。

もっと新しい、面白いモノを見つけたい。