ゆるっと入って、徐々に上がる

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姉弟子の存在が緊張感を……

「現役でいる限りはトップで走り続けたい」ガールズグランプリ2023 児玉碧衣インタビュー

児玉碧衣

Q:尾方選手は様々なところで憧れの選手として児玉碧衣選手を挙げています。それは変わらずでしょうか?

はい。でももうここまで来ちゃったので、姉弟子として捉えています。とはいえ碧衣さんに代わる憧れの選手がいるわけではないです。

Q:去年も、その前もですが、今年もガールズグランプリで児玉選手と一緒の出場になりますね。やはり身近な存在が一緒に出場するのは心強いでしょうか?

(碧衣さんが居るので)緊張しないんだと思います。普通開催のレースもですが、碧衣さんがいなかったら緊張するんです。良いのか悪いのか……っていうか普通に良くないと思いますけど。

偉大な師匠のコーチング

Q:陸上を続けようとは考えなかったのですね?

陸上の時は熊本県でも一番強いところだったので厳しくて、もう一生やらないと決めました。大学からも推薦が来ていたけれど「もうやりません」って。

Q:1日のスケジュールはどんな感じですか?

朝は……起きないです。昼前に起きて、ご飯を食べて、バンクへ行く。夕方まで乗って、みんなでご飯に行きます。

師匠(藤田剣次選手)の方針で、練習は「量より質」になっています。1日に多くて4本くらいしかもがきません。それでもキツいときは死にます。だからこれ以上ビシバシされるのは無理ですね。師匠もそれがわかっているから、こういうメニューを組んでくれています。

Q:師匠の指導力のすごさを感じます。

冬季移動も含めてたくさんのガールズ選手が師匠の指導を受けていますが、その人ひとりひとりに合わせたメニューを組んでくれています。みんなメニューが違うんです。

その分、師匠は自分の練習をあまりできていないんです。申し訳ないと思っています。

Q:では、大きなレースで勝った時は何かご馳走したり?

例年ガールズグランプリや競輪祭の前くらいのタイミングで、碧衣さんと2人で師匠にご飯をご馳走しています。焼肉屋さんみたいな普通のところではあるのですが、もうゲン担ぎみたいになってきていますね。

Q:師匠は泣きながら食べるのでしょうか?

そんなことはないです(笑)師匠が泣いてるところは見たことがないです。

Q:練習方法はバンクがメインですか?

ロードはデビューしてから1回も行ってないです。ロードバイクは競輪学校(現:競輪選手養成所)から持ち帰って、ダンボールに入ったままですね。

Q:たまには外で走りたい、と思うことは?

無いです。ロード練習が嫌いだったので……学校時代もみんなより2周遅れだったりして「もうちょっと速く漕げ!」って先生に言われていました。それに「これ以上速く走れません」って返していました。

Q:筋トレなどはしますか?

今年の4月から始めました。それまでは何にもやってなかったです。変化はまだあまりわかりません……1ヶ月に3、4回、パーソナルで見てもらってます。その方も選手なので、斡旋のスケジュールによっては入れ違いになって1ヶ月まるまるやれないことも。だから最近になってジムを契約しましたが、まだ1回も行けていません(笑)

Q:筋トレを始めようと思ったのはどうしてでしょうか?

レベルアップするため。今トレーニングを見てくれている方が久留米に移籍してきて、家にジムを構えているんです。自分1人では絶対やらないだろうし、見てもらえながらやれるのならばいいかなと思って始めてみました。

最初のうちはフォームができていないから、個人ではやらないように指導されていました。でも8ヶ月くらい経って「この重さなら1人でやってもOK」と言ってもらえるようになったので、ジムを契約した感じです。

Q:でもまだ1回も?

行っていません(笑)

ウェイトトレーニングを初めて、肉体的な変化はあまりわからないけど、力の入り方が変わったなとは思います。

「勝たなきゃいけない」と思いながら走るのは……

Q:同年代の友達は社会人1年生2年生あたりだと思います。全く違う道を進んでいると思いますが。

毎年年末に地元の集まりがあるのですが、最初の1年目は周りが「すごい」と持ち上げてきて、それが嫌でした。でも2年目以降はみんな普通に接してくれるようになって、自分も大学生みたいな気持ちで輪の中に入っていましたね。あまり自分が選手だとは感じていません。

Q:そんな尾方選手ですが、競輪選手として生きていくことの魅力を教えてください。

競輪選手は……やりたいことをやれるし、休みたいときに休めるし、寝たいだけ寝られます。

尾方真生, 吉川美穂, 決勝, オールガールズクラシック, 松戸競輪場

Q:ガールズケイリンをやっていて、楽しいと感じますか?それとも仕事としてやっていますか?

どっちもです。レースは楽しくありません。でも競走でたくさんの人と話ができるのは楽しいです。「勝たなきゃいけない」と思いながら走ることが、今年に入ってから多くなってきて、レースが小さくなって、自分が嫌になってしまいます。

Q:オッズは見る方ですか?

もう見ないです。予想紙も見ません。期待されていることが嫌です、買わないで欲しい……

Q:これどう記事にしよう(笑)でも勝った時はさすがに嬉しいんじゃないですか?

去年までは嬉しかったのですが、今年はそんなにです。「やったー」の気持ちよりも「今日のレースはここがダメだったな」とすぐに動画を確認しちゃいます。そういうレースしかできていないので、勝ってもそんなに嬉しく感じません。

レースは楽しくないけれど、強くなりたい

尾方真生, ガールズグランプリ2022, KEIRINグランプリ2022, 平塚競輪場

Q:それはやっぱり、自分の理想の「強い姿」があるからこそですよね。

はい。レースは楽しくないけれど、強くなりたい。やるんだったらトップで走りたいと思います。

Q:ガールズグランプリは今年で3回目。どのように捉えていますか?

なるようになるかと……緊張もしなくて、だからダメなんだろうなと思います。グランプリとか、G1とかは特に緊張が薄くて、だから初日で飛んじゃうんです。そうやって飛んだことで「あ、ヤバい」と緊張感が出る感じです。

Q:一発勝負は苦手ということですね?

そうです、だから嫌いです。グランプリも3日くらいにしてほしい……でもお客さんも初日が苦手なことはわかっていると思います。普通開催のレースでも初日は苦手だけれど「負けられない」という気持ちが多少はあるから、勝てています。

Q:逆に長丁場のレースの方が良いですか?

はい、4日制とかの方が良いです。疲労はあるけれど、4日制なら「もう1日ある」と気持ちに余裕が出ます。1回しか走ったことがないですけれど……

Q:脚質とレースの気持ちの入り方が似てますね。ゆるっと入ってどんどん上がっていく。

そういう感じが得意です。

Q:競輪選手としての最終的な目標は?

今ぐらいでずっと走りたいというのが本音ですけど……でもやっぱりグランプリは獲りたいです。

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