『2023アジア選手権トラック』ではチームスプリントで優勝、スプリントで銀メダルを獲得した太田海也。一方でケイリンは5位となるなど、アジアの英雄アジズルハスニ・アワンの走りを目の当たりにした大会でもあった。

アジア選手権が終わり、世界選手権を前にしたタイミングでインタビューを実施。アジア選手権で感じたアワンの強さ、世界選手権に向けて必要と感じたものなど、大舞台を前にした太田海也選手に話を伺った。

人ってこんなに本気になれるんだ

Q:アジア選手権を終えての感想を聞かせてください。

スタート前から、個人種目においてはアワン、チームスプリントにおいては中国が鍵になるだろうなと思っていました。結果、予想通りになりました。

終わってみて、アワンが「自分が思っているよりも、さらに強い位置にいた」というのが感想のひとつ。ケイリンでもスプリントでも悔しい想いをしました。

※両種目ともアジズルハスニ・アワン(マレーシア)が優勝

Q:実際に戦ってみて、彼の強さとはどういう部分だと感じますか?

自分自身、アジア選手権に向けてすごく仕上げてきました。それは確かなので、やっぱり(彼の強さは)気持ちの面かと思います。

アジズルハスニ・アワン

もちろん僕も勝つつもりだったし、優勝するためにやってきたけれど、そのあたりの準備がアワンの方が上でしたし、優勝した時の喜び方を見ても感じました。気持ちの入れ方がまず違いました。「人ってこんなに本気になれるんだ」と思いました。もちろん自分もしっかりやってきたつもりだったのですが「こんなに情熱のある人間がいるんだ」って感じて、勉強になりました。

もちろん彼のフィジカルはトップクラスですが、その上でレースに向けて弱点を無くすトレーニングをしてきたんだなって思います。完璧な準備がありました。

トレーニングは“世界選手権で勝つ”ため

Q:では、今の太田選手は世界選手権に向けて「完璧な準備」ができていますか?

これから世界選手権までまだ少し間がありますが、正直不安な気持ちやプレッシャーがあります。それを力に変えること、準備をこれからしなければと思っています。

(※インタビューは7月中旬に実施)

Q:世界選手権の前にフランスで合宿を行うと聞いています。

はい、そこで仕上げていく予定です。今のタイミングで準備をしすぎてしまうと、緊張やモチベーションのピークがズレると思っていて……合宿に入ってから、ジェイソン(・ニブレット短距離ヘッドコーチ)と話しながら練り上げていこうと思っています。

合宿で気持ちの面でも技術の面でも、最後の仕上げをしていくイメージです。

Q:では現在行っているトレーニングはどのようなフェーズなのでしょうか?

先週まで、すごくハードなトレーニングの連続でした。今は疲労を抜きつつ、レースに向けた繊細な動きの確認をしています。

Q:ハードなトレーニングでは、また血を吐きましたか……?

「本気で全部、狙っていきたい」ニュージーランド旅を終えた太田海也にインタビュー

すごく重いトレーニングがドン!とあるというよりは、重めのトレーニングがずっと続いてる感じです。

例えば全日本選手権はナショナルチームにとっては半分トレーニングでもあったのですが、あの時は午前中に筋トレしてから大会メニューをこなしていました。大会後は1日休んでからトレーニング再開。そこから休まずにアジア選手権で……と、休みなく続く感じでした。

アジア選手権に向けて、体の準備はすごくできていました。でも気持ちの面での準備をもっと詰められたら、もっと良い結果になっていたかもと思います。

Q:とはいえ、世界選手権を見据えてトレーニングスケジュールを組んだ部分もあるかと思います。

そうですね。ジェイソンに今話したようなことを伝えたのですが、「そりゃ当たり前だよ、アジア選に向けてたわけじゃないから」と言ってくれました。信頼して世界選手権の準備をして、本番では自分の力を発揮したいと思っています。

世界選手権では、とにかくメダル!

Q:大会まで、あと2週間ほどです。
※インタビュー実施は7月中旬

はい、ゾクゾクしています。「世界選手権のためにやってきた」という日々があと2週間で終わると思うと、ワクワクとドキドキとハラハラと……そういうのがどんどん迫っている感じがしますね。今はそれほど緊張していませんが、レース前になったら緊張感も高まるんだろうなと思います。

Q:レース前はモードに入るというか、そういった心境になれていますか?

モードに入るべき時もあれば、入っちゃいけない時もあるんですよね。最近はコントロールしながらアップからスタートまでを過ごせているかなと思います。

Q:今回の目標を教えて下さい。

とりあえずメダルが獲りたいです!……すみません、記事にしにくい言い方しちゃって(笑)でも本当に、1つでもメダルを獲って帰りたいと思っています。

これまでの経験上、(大会日程的に)後の種目のことを考えてレースをして、良い結果が出たことがありません。他のことを考えながらメダルが獲れるような甘い世界ではないので、ひとつひとつ全力で挑むしかないなと思っています。

Q:ラップタイムなど、個人的な目標はありますか?

大口を叩くようですが、(チームスプリント第2走で)12秒3の数字を見てみたいですね。これまでの自己ベストは12秒4の半ばから後半くらいです。

Q:あとは長迫吉拓選手(チームスプリント第1走)が超速かった時、どう走りましょう?

ずっと練習してきましたし、ヨシさん(長迫選手)がどれだけ速くなっても僕のスピードが上がるだけです。心配はないのですけれど……ヨシさんのパフォーマンスをすごく楽しみにしてます。

この3人だから世界を目指せる

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