2023年の正月明け早々、ニュージーランドで開催された『ケンブリッジGP』。この大会に参戦した太田海也は、出場した4種目(ケイリン・スプリントそれぞれ2種目を2回)で完全優勝を遂げた。

【動画あり】太田海也は全種目で優勝、太田りゆ「2月に向けて希望が見えた」/『ケンブリッジGP』3日目リザルト

帰国し、すぐにナショナルチームの沖縄合宿に参加した太田選手にインタビュー。ニュージーランドの旅のこと、初参加となる沖縄合宿について伺った。

泣くほどしんどい金曜日

Q:このインタビューは沖縄合宿中(2023年1月に実施)に行わせていただいています。合宿生活はいかがですか?

レースの疲れが残ったまま合宿に入ったこともあり、一つ一つ「成し遂げるので精一杯」という感じがありました。今ちょうど1週間経ったところですが、2週目に入ってからはちゃんと成長を感じて、反省を活かしながらやれているように思います。

Q:スタッフからの情報では、金曜日に痛みで泣いていたとのことですが?

はい、泣いていました(笑)練習がキツくて、翌日の朝起きてうがいをしたら口から血が出てましたね。口の中のどこかが切れていたみたいです。それくらい頑張りました。

Q:え?やばやばじゃないです……か?

でもレースではこういう場面も出てくるものですし、まあ……楽しかったです。今週も同じメニューがあると思うとゾワっとします(笑)

Q:ナショナルのAチーム(ポディウム:2023年1月1日から)になって、合宿にも参加するようになりました。違う景色などは見られていますか?

自分の中で新しい「やっていきたいこと」が現れてきていると思います。しっかり成長を感じられていると思いますし、それがすごく楽しいです。

Q:沖縄での合宿は新鮮でしょうか?

そうですね。伊豆のいつもの環境でこの練習メニューを2、3週間やるとなると、心も体もへたってくると思います。

それこそ先週の金曜日はすごくしんどい練習でしたけど、沖縄の美味しいご飯を食べて良い景色を見せてもらって、すごく良い思いをさせてもらっているからこそ「もう1本やろう」と思えました。「たった50秒でこれだけのものが得られるのなら、俺はやるぞ」と思い込んで、50秒間に出し切りました。

伊豆でも感謝の気持ちは持っていますが、新しい刺激を与えてもらっているなと感じます。

「人間ってこうやって生命を繋ぎ止めるんだな……」

Q:その「もう1本」の練習について詳しく聞きたいのですが、どのような心境で行ったんでしょうか?

全部で4本の練習でした(750m~1km)。1本目が終わった時点では「よし、あと3本いこう」と思えたんです。

2本目が終わったところでは「よし……いこう。でもしんどい、ちょっと気合入れないと無理だな、あと半分か……」っと思いつつ、胃の逆流現象があり……

Q:2本目でもうアウトなんですね……

そうなんです。普通なら「やばいやばい……」と思うところなのですが、そこは自分のコントロールで「死ぬまでやろう」と思うことにしています。「自転車で死んで伝説を残そう」とか思っているんです(笑)

3本目もめちゃめちゃモチベーションの高い状態でしっかり走って、でも終わったら昇天していました。本当に心が折れそうになって「ジェイソン(・ニブレット短距離ヘッドコーチ)、いつか倒す」って思ったりもしましたけど(笑)

ラストの4本目を行って、今の自分の実力をトータルで見ることができて、「やっぱりまだまだ力が必要だな」とショックを受けました。全然力が及ばないです。

Q:4本目が終わると、足の状態はどうなっているのでしょう?

感覚としては筋繊維がほつれたみたいな感じです。ムキムキからイカゲソみたいになってますね。その日はしゃべるのも辛いし、食欲も無くなっているので夜ご飯を食べることも辛い状態。でもたくさんご飯を食べて、めちゃめちゃ早く寝ました。

「人間ってこうやって生命を繋ぎ止めるんだな……」と思いました。そのくらい無駄な動きをせずに寝ました。

Q:同室は誰でしたか?

(山﨑)賢人さんです。僕はすごく寝るのが早いので、めっちゃ迷惑をかけています。

Q:普段は何時くらいに寝るのでしょう?

10時くらいですが、賢人さんは11時半とか12時くらいまで起きていると思います。すいません……って言いながら電気消させてもらってます。僕は夜が弱くて、すぐ寝ちゃうんです。その代わり朝は凄く元気なんですけど……

Q:では山﨑選手は暗闇の中で時間を潰していると……

多分そうですね。暗闇でストレッチとかしていると思います。

自分がしたいことをやるレース

1/3 Page