レースに勝つ、その気持ちは変わらない

2/3 Page

腰とのリスクのある付き合い

脇本雄太, 最終日11R, 競輪祭, 小倉競輪場

Q:SNSなどで見ましたが、また腰を悪くしてますか?

「腸骨がまた折れたんじゃないかなあ」と疑っています。ちなみに今(インタビュー中)も痛いんです、座ってしゃべっているだけでも痛い状態。

Q:それは東京2020オリンピック後からの怪我が続いてる状態でしょうか?

そうですね。終わって1ヶ月後くらいからずっとです。オリンピックまでの過酷な練習のせいなのかはわかりませんが、多少はあるのかもしれません。

Q:うまく付き合っていくしかない類のものでしょうか。

完治するかどうかはまだわかりません。でも普通にしてる時と、走っている時とで痛み方は変わらないんですよね。だから気持ちの持ちようかなと思っています。「走ったからといって痛くなるわけではない」とわかってはいるものの、「走って折れたらどうしよう」というリスクへの怖さもあります。

Q:「全力で踏んだことで折れる」というのは、可能性としてはありますか?

はい、そうやって一度折れています。だからそのリスクとの戦いですね。

変化に対応する時期であり、まだ抗える時期でもある

脇本雄太

正直に言ってしまえば、30歳を超えたら脚力自体は落ちていくものだと思っています。

Q:以前のインタビューでも「この戦法でやれるのはあと1、2年」とおっしゃってましたね。

宣言通りです、本当に。変化は絶対に求められると思います。

Q:脇本選手の走り方といえば「かまして、ジャン前から行く」です。ウィナーズカップ決勝で古性優作選手の番手についたのも「変化を求められる」からでしょうか?

勉強させてもらいました。立ち回りの勉強です。

僕は基本的に「行ける時に行く」なので作戦会議はありません。一方で(ウィナーズカップ決勝の)古性との作戦会議は綿密でした。「ここでこうなったら相手はこうくるんで、こうしましょう」みたいな。そういうものを結構組んでくれて、実際ほぼその通りだったんです。それで「ああ、そういうことをちゃんとしなきゃいけないんだな」と感じましたね……

古性優作, 脇本雄太, 松浦悠士, ウィナーズカップ, 別府競輪場

Q:今まで考えてなかったのが、逆に凄いですね(笑)

まあ仕方ないんですよ、今までのナショナルチームの中では「考えちゃダメ」だったので。これからは競技生活と真逆のことをしないといけません。

Q:外から見ても「違いがあるんだろうな」とは思いますが、実際走っている人からお聞きすると、やはり「競輪」と「KEIRIN」は違いが大きいんですね。

そうですね。新田(祐大)さんも僕と同じように、変化を求められているところだと思います。変に番手を狙ったりするんですよね。距離も短くなっています。新田さんも「違い」を自覚しているはずです。

Q:今は「模索中」だと思いますが、おぼろげなイメージなどはもうあるのでしょうか?

今年と来年1年間(2023〜2024年)は「いつも通り」で頑張ってみようと思ってます。それでダメそうだったら本気で変えていく必要がありますね。

変化に対応する時期ではあるんですが「まだ抗ってもいいかな」とも思っているんです。

Q:それは体の調子も含めて、ですね。

その通りです。おじさんですよ、もう。

Q:走っていて黄色い声援などは聞こえますか?

まったくありません。野次ばっかりですよ(笑)

賞金首、脇本雄太

脇本雄太, 古性優作, 三谷竜生, 全日本選抜競輪(G1), 高知競輪場

Q:脇本選手は競輪選手としてどこまで行きたいと思っていますか?

明確な目標は……今は想像がついてない状態ですね。現状を理解した上で考えると、目標と実力が噛み合ってないんじゃ意味がないので。

Q:不調も抱えているし、34歳にもなったし……年齢についてはいかがですか?いつの間にか34歳です。

よくないですねえ(笑)歳も重ねて、自分を取り巻く環境もどんどん変わっているなと感じます。

Q:取り巻く環境の変化と言いますが、脇本選手はすでに競輪界で名を馳せました。それはご自身でも感じるのでは?

う〜ん、「賞金首」って感じですね。倒したら良いものが貰えますよ(笑)

Q:ゴール・D・ロジャーは55億ベリーの賞金首ですが(ONE PIECE)、脇本雄太は?

2億とかじゃないですか?最初の壁である1億は超えてる、くらいの。賞金首、そうでなければRPGの敵みたいな感じですね。「みんなで倒そう」感がすごく出ていて嫌です(笑)

若手世代への期待と心配

2/3 Page