「パナソニックといえばあの色」

ブノワ:グランプリに向けて新しい自転車などを準備していますか?
佐藤:イエス!同じ色のパナソニックです。あとモーターも付いていて……
ブノワ:(笑)
冗談はさておき、パナソニックの自転車を使っているのは何故ですか?慎太郎さんの車体のカラーは90年代のパナソニックのチームを連想させますが。

Tour de France 1985
佐藤:あの色は我々が高校生の頃の「パナソニック」カラーですよね。パナソニックの選手がヨーロッパで活躍しているのを見ていました。そして、パナソニックの自転車はこれまで乗ってきたフレームの中でも剛性が高いんです。硬いのが好きで乗っています。
ブノワ:フレームサイズも小さいですし、もしかしたら競輪界で一番剛性の高いフレームに乗っているかもしれませんね。
佐藤:そう、硬い方がいいんです(笑)
もっと三角筋を鍛えたいけど……
ブノワ:ナショナルチームでは空力を重視していますが、慎太郎さんはそういったことを取り入れたいと思っていますか?
佐藤:取り入れたいと思ってハンドル幅を狭くしました。380mmを使ってたんですが、350mmにしてみました。ただ追い込み選手はブロックしなければいけないこともあるから、ハンドルを投げ出すようなフォームにできないんですよね。できることならやりたいですが……。
ブノワ:ヴェロトーゼのシューズカバーは使ってますか?
佐藤:使ってる!あれはブノワもおすすめですか?

ブノワ:良いですね!とても安くて、とても速い。風洞実験でテストしたことがあるんですが、いくつもテストした中でかなり良い方に入ります。
佐藤:破れやすいんですけど、安いから全然大丈夫です。なるほど、みんなには内緒にしましょう(笑)「良い方」ということは、もっと良いものもあると?
ブノワ:もっと良いものはあるんですが、高いんですよね。数ワットしか変わらないので、あえてご紹介するものでもないかなと。先行の選手なら違いが出るかもしれませんが、追い込みの選手なら気にしなくて良いレベルかと思います。
選手によってですが、レースでプロテクターを使う選手もいますよね?あれは空力的には不利ですが、どのように考えていますか?
佐藤:俺は薄い下敷きみたいなものを付けているだけなので、何もないに等しいと思います。自分としては必要ないと思いますし、今は着てない人が多いですね。
プロテクターじゃないですけど、三角筋(肩の筋肉)を大きくしたいんですよね。でも空力的に不利になると思って、我慢しています。
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確かに、肩はそこまでムキムキしていない
自分のスタイルを確立すること
ブノワ:慎太郎さんは追い込みの選手ですが、若い頃から追い込みの選手でしたか?歳をとってから今のスタイルになりましたか?
佐藤:普通は30歳くらいまで先行・捲りで走るんでしょうけど、俺は24歳くらいで追い込み選手になっていました。比較的早かったと思います。後ろから人に差されるのが嫌な、そんな性格でしたね。
ブノワ:早い決断ですが、先輩は許してくれたんですか?
佐藤:先輩は許してくれなくて、結構モメましたよ。「もうちょっと前で走るべきだろう」とは言われましたけど、自分を「自力・先行でタイトルを獲れる人間」だとは思えなかったし、追い込みの方がタイトルに近いと確信していたので、迷わず決断しました。
ブノワ:私は「稼げる選手」が競輪選手として素晴らしいとお伝えしているんです。だから慎太郎さんの考え方はとても好きです。競輪をこれからより良いものにしていくためには、「30歳まで先行する」と決め打ちするよりも、自分のスキルに合った戦い方をしていくべきだと思います。
佐藤:俺は早い段階で追い込みになったので、ラインに貢献した期間が短かったために、追い込み選手としてのハードルが上がってしまったんですよね。そこには苦労しました。
ブノワ:そういった話も含めてですが、やはりS級S班になるためには他の人と違うことをしなければいけないと思います。ご自身でそのような自覚はありますか?
佐藤:上位の選手ともなれば、競輪が生活の中で一番大事なものだと思うし、勝ちたい気持ちはみんな強いと思います。その中で「他を上回る」ためには、違うものが必要なんでしょうね。
ブノワ:これから養成所に入る選手へアドバイスをするとしたら、どんなことを伝えますか?
佐藤:1日1日を無駄にせず、大切に過ごすことですね。将来のビジョンはもちろん大切ですが、今を全力で生きることです。