欲の出どころが変わった

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明らかに違う場所へと進化した

ブノワ・べトゥ 脇本雄太 Yuta Wakimoto (JPN), 新田祐大 Yudai Nitta (JPN), Men's Keirin 1st Round AUGUST 7, 2021 - Cycling : during the Tokyo 2020 Olympic Games at the Izu Velodrome in Shizuoka, Japan. (Photo by Shutaro Mochizuki/AFLO)

Q:ブノワジャパン体制(2016年10月~)の前にもナショナルチームにいたことがあり、1度離れましたが、当時はどういう考えで離れたのでしょうか?

当時は競輪選手デビューの前からナショナルチームに所属していました。でもどっちも中途半端で「このままではキツい」という考えもあり、競輪の方に専念しました。

そこから競輪がひと段落したので、また競技の方に意識が向いたんです。その間もずっと、競技は好きだったのでチェックはし続けていました。

Q:その深谷さんから見て、前回と今回の違いは?

全然違います。最初のナショナルチームは競技が好きな人が集まって、国際大会に行くという感じでした。今はちゃんとチームとして機能して、目標を持った選手たちが集まって、明確な目標を持ってみんなで進んでいく……そのような組織になっています。今は明らかに違う場所になっています。

組織に属することへの葛藤

深谷知広 小原佑太, 男子チームスプリント, 2021全日本選手権トラック

Q:深谷さんは組織に属するのが苦手な性格かと。そういった部分でストレスを感じることは?

自分のやりたいように出来ないのが組織です。そんな組織に属するということなので、葛藤はありました。

最後のオリンピックに向けての年明けからは、ずっとそれを感じていて、微妙な空気感でした。でもそれが組織と言われればそうだとは思うし、スポンサーの意向に沿うことは資金を出してもらっている側の責任でもあります。そこが良い意味でも悪い意味でも組織に属することだと。

それを考えた時、やっぱり自分の資本で人生を生きたいなと思って。

Q:それは深谷さんの根源……じゃないですか?競輪選手になったのも自由を得るため。

それもありますね。

Q:とはいえ、競技は好きなことは凄く伝わります。今後の競技への関わり方、ビジョンは?

日本の競輪で、静岡支部の若手を中心に自分の経験してきたことを伝えていくことを始めています。その中での関わり方を探していこうかなという想いはあります。

Q:今の若手へのアドバイスは?

自分の価値観を、しっかりと強い価値観を持って欲しいなと思います。

なんとなくやるだけは後悔するので、何を求めていくか100%決めた方が良いと思います。何にしろ100%で頑張って欲しいですね。それがアルカンシェルなのか、五輪のメダルなのか……それ以外の100%でも良いんです。世界の選手と楽しみたいでも良いし、シンプルに強くなりたいでも良いし。

100%信じていける「気持ち」を持って欲しいです。それであれば後悔はしないと思います。

深谷知広 東京オリンピック 自転車トラック競技日本代表

後悔をしない100%の選択をしてナショナルチームを離れた深谷知広。そのために中途半端な選択はしない。では今後の深谷知広はどうなるのか。それはまだ本人にも見えていない。

後編はナショナルチームの経験を持つが故の、深谷の考え方、競輪選手にとってナショナルチームがどのような場所なのかに触れていく。

「上がっていく過程が好きだった」深谷知広 ナショナルチーム引退の真相【後編】