急成長をとげる女性ライダー 優勝候補のハナ・ロバーツが初日1位
オリンピックが正式種目となったおよそ4年前。世界的にも女子の競技人口はけして多いわけではなく、競技レベルも高いものではなかった。
しかしオリンピックの正式種目に決まって以降、一気にそのレベルが向上。今や男子顔負けのトリックを行うライダーたちが次々と出てきている。
そうした中、優勝候補の筆頭にあげられたのが、アメリカのハナ・ロバーツだ。現在19歳の彼女は、2017年の初代世界チャンピオンに輝き、これまでに3度世界王者に輝いている。
決勝戦の走行順を決める初日のシーディングランでは、そのロバーツが下馬評通りのライディングをみせた。
360の横回転中にハンドルバーを回すバースピンのコンボトリックや、自転車を1回転させるテールウィップ、さらには自転車とともに縦に1回転するバックフリップなど、難易度の高いトリックを連続して成功させて1位となった。
シーディングラン結果
1位 | ハナ・ロバーツ | アメリカ | 87.70 |
2位 | ペリス・ベネガス | アメリカ | 86.50 |
3位 | ニキータ・デュカロ | スイス | 83.55 |
4位 | シャーロット・ウォージントン | イギリス | 81.50 |
5位 | ナタリア・ディーム | オーストラリア | 78.20 |
6位 | ララマリー・レスマン | ドイツ | 69.70 |
7位 | マカレナ・ペレス グラセット | チリ | 67.90 |
8位 | 大池水杜 | 日本 | 61.45 |
9位 | エリザベタ・ポサドスキフ | ROC | 51.30 |
日本から出場の大池水杜(24歳)のシーディングランは8位。
長年、日本の女子フリースタイル界を牽引し、2018年に行われたワールドカップ、フランス大会で日本人初優勝を飾った彼女だったが、オリンピック初日のランは、バックフリップで着地ミスなどがあり思うように得点が伸びなかった。
ウォージントンの超絶トリックが女王を上回り、初代チャンピオンに
シーディングランの結果、決勝戦では優勝候補のハナ・ロバーツは最終走者、大池は2番目の登場となった。選手はそれぞれ2回ずつ走り、得点の高かったほうが採用されるベストラン方式で行われた。
トップ選手たちが後続に控える中でスタートした大池の1回目。中央にあるビッグジャンプで大技に挑戦する。
バックフリップ中にハンドルをひねるX-upという技を加えたコンボトリックを行ったが、着地で失敗し転倒。大池は2本目に備えて、その後の走行を回避して気持ちを整える。
そして迎えた2回目のラン。1分間大きな転倒もなくクリアしたが、技の難易度を落としたことも影響してか、得点は75.40ポイント。最終順位は7位となった。
一方、初代女王をかけた優勝争いは最後まで息を呑む展開となった。
1回目のランでベストスコアを出したのは、やはりハナ・ロバーツ。前日のシーディングランより更に高い難易度の技を披露していく。
空中で自転車を2回転させる「ダブルテールウィップ」、バックフリップ中にハンドルバーを1回転させる「バックフリップバースピン」といったビッグトリックをメイクし、細かな技でスムーズにつないでいく。
まさに女王の走りをみせたロバーツ。その得点は96.10ポイント。驚愕の高得点に、本人だけでなく、誰もが彼女の優勝を確信した。
しかし、ドラマは待っていた。
その主役は、シーディングラン4位のイギリスのシャーロット・ウォージントン。1回目のランで着地でミスして転倒した大技「バックフリップ360」を2回目も挑戦し見事成功。
縦回転しながら横回転も加える女性では世界初の3Dトリックをメイクして勢いに乗ると、その後フロントフリップも成功させる。
結果、ロバーツの96.10ポイントを上回る97.50を叩きだし、ウォージントンがトップに立った。
その走りをみたロバーツに一気に緊張感が戻ってくる。ウォージントンよりさらに難易度の高いルーティーンを出さなければいけなくなったのだ。
思わぬ展開に動揺が隠せなかったロバーツ。最終走者としてライディングを始めたものの、プレッシャーからか最初のビッグジャンプで失敗。
地面に足がついたその瞬間、ウォージントンがBMXフリースタイル初のオリンピックチャンピオンになったことが決定した。
これまでワールドカップや世界選手権ではタイトルから見放されてきたウォージントン。驚愕のビッグトリックで世界を驚かせ、見事金メダルを獲得した。
女子リザルト
1位 | シャーロット・ウォージントン | イギリス | 97.50 |
2位 | ハナ・ロバーツ | アメリカ | 96.10 |
3位 | ニキータ・デュカロ | スイス | 89.20 |
7位 | 大池水杜 | 日本 | 75.40 |