男子1組目・長迫吉拓
レーススタートは10時。夏晴れに見舞われた会場は、スタート時点ですでに30度近くまで気温があがっていた。無観客レースとなったこともあり、静寂に包まれた会場が緊張感を高める。
フルフェイスのヘルメットを纏い、静かに闘志を燃やすトップレーサーたちが、高さ8mのスタートヒルの頂上で呼吸を整えていく。
そしてオープニングレースとなる1組目の6人がスタートゲートに並ぶ。その中に日本代表、長迫吉拓の姿もあった。
前回のリオオリンピックでは「オリンピックの雰囲気に呑まれて不完全燃焼となってしまった」という長迫。オリンピックでしか味わうことのできない”何か”をいかにして味方につけるか。
一度オリンピックを経験したからこそ見える景色がそこにはあったに違いない。
男子準々決勝 1組目 1レース目ゲート順
1 | シルバイン・アンドレ | フランス |
2 | ロメイン・マヒュー | フランス |
3 | カイ・ホワイト | イギリス |
4 | コーベン・シェラー | アメリカ |
5 | 長迫吉拓 | 日本 |
6 | アレックス・リンバーグ | 南アフリカ |
長迫のスタートは5コース。最短距離であるインコースが有利とされているなか、ランキング上位選手が内側に控えているため、決して条件は良くない。
スタートシグナルが鳴ると同時に、一気にかけて降りていく6人。わずかに遅れをとった長迫だったが、勝負の1コーナーにむけて徐々に順位をあげていく。
先頭はインコースでスタートしたフランスのシルバイン・アンドレ。さらに同じくフランスのロメイン・マフューが続く。長迫は、アメリカのコーベン シェラーと並ぶ形で1コーナーへ突入。
しかし、イン側でシェラーが粘ったことで内側に切り込むことができず、外側に押し出されてしまう。
結果、第2ストレートではシェラーの後方につくことになり、長迫のスピードが減速。そのタイミングで別のラインからホワイトに交わされて長迫は5位で第2コーナーを通過。後半に追い上げたものの、1レース目を5着で終えた。
1レース目終了時点の1組目の順位
1位 | シルバイン・アンドレ | 1pt |
2位 | ロメイン・マヒュー | 2pt |
3位 | カイ・ホワイト | 3pt |
4位 | コーベン・シェラー | 4pt |
5位 | 長迫吉拓 | 5pt |
6位 | アレックス・リンバーグ | 6pt |
2レース目
1レース目を5着で終えた長迫のポイントは5点。準決勝進出条件の上位4人に入るためには、これ以上順位を落とすわけにはいかない。
さらなるプレッシャーがかかるなかで迎えた2レース目。ゲートポジションは、1レース目の着順上位者が先に決めることができるため、長迫は再びアウト側の5レーン。
男子準々決勝 1組目 2レース目 ゲート順
1 | シルバイン アンドレ | フランス |
2 | ロメイン・マヒュー | フランス |
3 | コーベン・シェラー | アメリカ |
4 | カイ・ホワイト | イギリス |
5 | 長迫吉拓 | 日本 |
6 | アレックス・リンバーグ | 南アフリカ |
2レース目に好スタートをきったのはイギリスのホワイト。スタート直後も加速し先頭で1コーナーへ。一方、アメリカのシェラーがスタートで出遅れて、長迫は4番手で1コーナーを通過。
その後、ホワイト、アンドレ、マフュー、長迫の順で1列棒状のまま最終ストレートへ。
最終的にアンドレがホワイトを交わし1レース目に続き1着となった。長迫は4着。
2レース目終了時点の1組目の順位
1位 | シルバイン アンドレ | 2pt |
2位 | ロメイン・マヒュー | 5pt |
2位 | カイ・ホワイト | 5pt |
4位 | コーベン・シェラー | 9pt |
4位 | 長迫吉拓 | 9pt |
6位 | アレックス・リンバーグ | 12pt |
長迫、勝負の3レース目
アメリカのコーベン・シェラーと同ポイントで迎えた長迫。準決勝進出への4位を自力で確保するためには、なんとしてもシェラーより上位に入らなければならない。
明日につなげるか、それとも東京五輪最後のレースになるのか。まさに勝負の1レースとなった。
男子準々決勝 1組 3レース目 ゲート順
1 | シルバイン・アンドレ | フランス |
2 | ロメイン・マヒュー | フランス |
3 | コーベン・シェラー | アメリカ |
4 | アレックス・リンバーグ | 南アフリカ |
5 | カイ・ホワイト | イギリス |
6 | 長迫吉拓 | 日本 |
息詰まる接戦の中、好スタートをきったのは、コーベン・シェラー。長迫もアウトから追い上げるものの、1コーナーを先頭で通過したのはシェラーだった。
長迫はインコースから先に侵入したアンドレをアウト・インで抜きにかかるものの、わずかに交わせず。3番手で後半の巻き返しを狙っていく。
徐々に先頭との差をつめて、何度も抜くチャンスを伺う長迫。それでも世界のトップレーサーたちは追い上げを許してはくれなかった。
結果、3レース目を3着でフィニッシュした長迫だったが、シェラーが2着に入ったことで、ポイント合算による最終順位は5位。
わずかに届かず、準決勝進出はならなかった。
準々決勝1組目の最終順位
1位 | シルバイン・アンドレ | 3pt |
2位 | カイ・ホワイト | 9pt |
3位 | ロメイン・マヒュー | 10pt |
4位 | コーベン・シェラー | 11pt |
5位 | 長迫吉拓 | 12pt |
6位 | アレックス・リンバーグ | 18pt |
その他の組では、優勝候補が順当に勝ち上がっている。オランダのニーク・キンマン、フランスのジョリス・ドデー、アメリカのカーナー・フィールズがそれぞれ1位通過。
明日行われる準決勝は1レース8人で行い、準々決勝同様3レース合計で決勝進出者8人を決めていく。その後、いよいよ金メダリストが生まれることになる。