初心者競輪ライター、爆誕!

これは競輪初心者が書く競輪コラムです。

東京は上野駅。アメ横のガード下、日本人の味覚など全く意識していないであろう本格的過ぎるタイ料理に舌鼓を打っていたある日の晩、編集Tが唐突にこの話を切り出してきた。

「アオヤギくんさ、ギャンブル好きでしょ? ってことは、競輪とかトラック競技に関するコラム書けるよね?」

辛いのをやせ我慢して流し込んでいたパクチー臭いグリーンカレーが、その瞬間食道ではなく本来ならば入ってはいけない場所・・・、即ち気管の中に無遠慮に進入してしまった。

むせながら考える。競輪なんてこれまでの人生で観戦したこともなければ賭けた事もない。それがトラック競技となれば尚更のことで、若い頃に少年チャンピオンで連載が始まったばかりの「弱虫ペダル」を、「浦安鉄筋家族」に辿り着くまでに流し読みしていた程度・・・。って、あれってトラック競技じゃなくてロードレースだっけ? そんな違いさえもわからない。

そんな男がコラムなんぞ書ける訳がないではないか!

編集担当者も競輪シロウトなのにコラムを書く!

「いや、俺も競輪全然わかんないのよ。1度だけ宇都宮競輪に行ったことあるけど、どう予想していいのか全くわからなかった。宇都宮といえばやっぱり餃子でしょ。途中からそっちが気になっちゃってさ。結局、正嗣にいったよ。美味しかったね」

いやいやいや。編集者もライターもどっちも競輪全く知らない、そんなコンビで連載なんて無理でしょ。ネット上で全世界に向けて発信されるコンテンツの一部分を担うのだ、未経験且つ知識ゼロなどと云う生半可な状態で臨んで良い物である訳がない。言うなれば、ロースやカルビ等のメイン食材の仕入れルートを確保せぬまま、何故かミノだけ確保出来ている状態で繁華街の一等地にて焼肉屋を開店してしまうようなものだろう?

「アオヤギくんのそのたとえ話はぶっちゃけよくわからないけど、でもこれやるって決めたからさ。だってほらキミ、文章書く仕事で食っていきたいっていってたじゃん」

そうなのだ。私アオヤギ、30半ばの中年男、自由業。ギャンブルが好きだとか何とか言いながら、空いている時間にはパチスロを打つしか能がないクダらない人間である。読者の方で判る人は少ないかもしれないが、パチスロ「弱虫ペダル」というマシンで遊んでいたら、その熱すぎるストーリーのせいでホール内にて涙し、隣に座る知らない兄ちゃんを戦慄させたのは墓まで持って行く内緒の話。

パチスロ好きの初心者アオヤギが、読者と一緒に競輪を学ぶコラムです

そんなしょうもない人間ではあるが、元々文章で生計を立てると云う事に夢を抱いていたので、正直この話はキラキラと光り輝く金塊を目の前に積まれているような感覚にはなった。

しかし、だ。

文筆業を生業とする人間を心の底から尊敬し、心の中から羨んできた人生がこれまであったからこそ、今回のテーマに対して全くの無知である今の自分がコラムを簡単に請け負ってしまうことは、全世界に沢山いるであろう競輪ファンのみならず、自分の「夢」に対しても冒涜であるように感じた。

だからこの話はキッパリと断る事にした・・・

・・・・、えっ?

じゃあ何故このコラムが配信されてしまっているのかだって?

いや・・・、え、うん・・・、まぁその・・・。

仰るとおり、このコラムは配信されてしまっている・・・、ね?

「大丈夫だよ! 全くのド素人が競輪とかトラック競技ってものに興味を持って勉強し、知識をどんどん身に付けて行く感じのコラムだからさ! 読者さんも一緒に勉強できるし! 将来は競技場でオフ会とかやっても面白いじゃん! ネチネチした葛藤なんてマジどうでもいいんで、断らずにやってね!」

この一言。笑顔でのこの一言よ。

どうやら仕事の打診などではなく、決定事項だったみたいです。はい。

グチグチ思い悩んだあの時間、返してほしいです。

てな訳でして、次回からは早速、ド素人ながら自転車の事を勉強し、ズッポリと競輪やトラック競技なんかの世界をデスメタルよろしく抉って行きます故、どうかお付き合い下さいませ。

ではまた。

文/アオヤギソースケ