現在9種目がUCI正式種目として行われているトラック競技。しかし現在の形、現在の種目数で開催されるまでには幾度もの除外や追加等、そしてルール変更が施されてきた。本シリーズでは、UCI世界選手権やオリンピックにおける種目・ルールの変遷をその始まりから辿り、トラック競技の発展という視点からその魅力を探っていく。
前回の「オムニアム誕生と発展の裏側」に続きシリーズ最終となる第5回目の本記事では、2017年から縮小されたオムニアムを含め2020年現在のトラック競技と一緒に、過去の変遷が意味してきたものについて考えていきたい。
オムニアムは誰のため?
短距離から長距離、ポイント獲得型やサバイバル型など様々な種目で構成されていたオムニアム。しかしそんな多種多様な種目が魅力のオムニアムは、UCIトラック世界選手権2017年大会から、種目数が6種目から4種目に縮小され、以降UCIオムニアムの公式種目数は4種目となっている。
変更前の6種目(2016年UCIトラック世界選手権・同年リオオリンピック)
1kmTT
スクラッチ
個人パシュート
エリミネーション
ポイントレース
フライングラップ
変更後の4種目(2017年以降のUCIトラック世界選手権・2020東京オリンピック)
スクラッチ
テンポレース
エリミネーション
ポイントレース
この変更は「トラック競技をより競争力の高い、より観客にとって分かりやすく楽しみやすい競技にしていく」というUCIの新たな方針によるもの。これに基づき、個人で行う3種目を除外する代わりに、テンポレースが新たに追加され、オムニアムは「中長距離を得意とする選手に特化した種目」へと生まれ変わった。
オムニアムがオリンピック正式種目に追加される以前から、UCIは「トラック競技をスプリンターだけでなく中長距離型選手も活躍できる競技にしていきたい」という方針を打ち出していた。その願いは約10年を経て、この新しいオムニアムによって形になったといえる。
出典・参考:UCI、IOC、British Cycling、Cyclist、Cycling News、Cycling Weekly