「逃がしたら最後、捕まえられない」
何だか世紀の大怪盗を追いかける警察が言いそうなセリフだが「この男を逃がしてはいけない」と世界の強豪たちが注目しているのが日本の脇本雄太。
日本が誇る先行屋がいよいよワールドカップの後半戦、第4戦と5戦にエントリー。これまでワールドカップのケイリン種目で通算2勝を挙げている脇本のシーズン前の胸中、そしてオリンピックに掛ける想いが語られた。
オリンピックへの選考基準は「本当に厳しい」
Q:最終シーズン、本当に最後ですが、いろいろ賭けていた中で厳しい選考基準になりましたか?
厳しいと、本当に厳しいとは思っています。多分皆がそう思っているのではないかと思います。
Q:どういう意味で?
ブノワコーチとの面談でオリンピックに出場する選手の選出についての話があって、「あくまでも世界選手権での実績を残した選手を優先する」という項目を出されました。そうなった時に仮にワールドカップで僕が金メダルを2個獲っていようが、世界選手権での銀メダルの方が価値が高いということが事実がありました。「もしこのまま成績が悪かったら選ばないよ」とも言われて、現実的には厳しい話でした。
Q:それは新田祐大選手、河端朋之選手と比べて「自分だけが世界選手権で結果を未だ残せていないから」ということでしょうか?
そういう意味です。でも厳しい言い方だとは思いましたが、自分への激励だと捉えています。「今のところは状況が悪いが、お前だったらこの状況を覆すだろ!」という言い方だったと感じます。
Q:ここまでのワールドカップを見てきてライバルたちをどう見ていますか?
レースは全部見ました。ラブレイセンが今は異常に強いと感じます。実際その場にいて、レースをしていたらそうは思わないかもしれませんが、客観的に観るとラブレイセンは凄いと思います。「あのブフリが負けるんだ・・・・」と。
Q:楽しみではありますか?
対戦してみたいです。スプリント種目だったら嫌ですけどね(笑)
Q:そういう世界の強さを観てきてからの第4戦で初参戦となりますが、やり辛い部分は?
それはありますね。本当は触りの一発で戦ってみて、確認をした後で本番みたいな形にしたいところです。でも僕らが決めることではないので、僕は言われた通りにやるだけです。
Q:第4戦から参加ということについて、コーチとは話はしましたか?
話はしましたが、だから?って感じです。「そんなことでお前は影響されるのか?」って怒られるだけです。どんな状況でも結果を出すのは選手側の使命ですよ。
Q:日本でケイリンの最大枠は2つ。若手がメダルを獲る(第1戦で松井宏佑が銅メダル)などありましたが、レギュラーメンバーの中でこの枠を勝ち取る自信は?
レギュラーメンバーだけの戦いだったら、それはあります。でもケイリンのレースの特性上、世界レベルの選手たちが集まったレースでどのような走りをするかが大事になります。負ける可能性もあるし、甘くはないということですね。僕は自分自身で仕掛けて戦うということを前提としているので、それ故の弱さはあります。その中でどう勝つかが難しいところです。
相手が強くても順応できるのが2人(河端、新田)です。しっかり相手の強い部分を利用して自分の勝ちに繋げることが出来る。そこは自分には無い2人の強みだと思います。