2019年9月14日〜9月16日、日本競輪選手養成所内『JKA250』で開催された『第88回 全日本自転車競技選手権大会 トラック・レース(2019全日本トラック)』。初日14日に行われた女子エリートスプリントでは、3本目までもつれこんだ接戦の末、小林優香が太田りゆを下し、自身初の全日本スプリントのタイトルを手にした。

3本目へもつれ込む激闘、小林優香が自身初のスプリント日本女王へ/2019全日本トラック 女子エリート スプリント

本記事では、昨年までで10連覇していたスプリント日本女王・前田佳代乃 元選手による決勝戦の解説をお届けする。

前田佳代乃、全日本10連覇達成も電撃引退で有終の美/2018全日本選手権トラック・女子スプリント

決勝(太田りゆVS小林優香)

決勝はスプリント2強の太田りゆと小林優香、日本ナショナルチーム同士の決戦となった。

1本目

1本目は太田りゆの勝利。1車ほどの距離を空け、バックストレートで両者ともバンク中段まで上がっていたが、太田が3コーナーで下る。小林が中段のまま残り2周のホームストレートへ。ホームストレートで太田もバンクを上がり、小林がそれを見て高さを合わせる。太田が後ろを見続ける形で、残り1周半太田が下へ降り小林が外側から踏んでいく。お互いゴール線から踏み始め、バックストレッチで太田がダンシングでさらに加速。対する小林は外からの展開に伸びきれず、ゴールスプリントは粘った太田が先着。1本目を勝ち取った。

2本目(動画2:20〜)

前田「互いをよく知る同士の勝負は嫌です(笑)相手が仲間だとしても勝負の世界だから、お互いに真剣。何よりお互い負けたくないという想いも痛いくらいわかるので、見ていて胃がキリキリします。走ってたらそのようなことは全然感じないし、今も多分2人は冷静なんですけど。」

動画3:34〜

前田「これは、りゆが早めに詰めないとマズい。優香の得意なロングスプリントへ持ち込まれますね。そうなると優香の2周逃げもあるかもしれない。」

前田「(太田選手が離されるのを見て)早めに相手を目標にして詰めていける、要するに(ドラフティングを使って)相手を利用できる距離感まで詰めないと、優香のように自足があって長い時間高いスピードで走れる相手だと逃げ切られる。りゆが、ここ(2周目の4コーナー)で詰めないと本当にまずい。逆に、りゆがこれを捕まえ切れたら凄い。でも…キツいんじゃないかな

長い距離でも高いスピードを維持する事を得意とする小林にとって理想的な展開となったレースであった。

前田「(残り半周で距離が詰まらないのを見て)これは、まんまと優香に展開を持って行かれたレースでした。恐らく優香が、こういうレース展開をすれば、自分のストロングポイントを活かせるという自信があったと思います。」

3本目(4:10〜)

前田「優香は外側ですが、先行すると決めていたら2本目と同じ様に、自分から仕掛けて前へ行くと思います。ただ、りゆも学習してるでしょうし、2本目と同じパターンだと自分には不利なので、簡単には行かせないはず。」

動画5:02〜

前田「やはり優香が仕掛けましたね。さらにまたどんどん踏み上げていっているので、これにはりゆも足を使ってしまいますが、頑張って踏んで行かないとまた逃げられてしまう。」

動画5:16〜

前田「このように、仕留められる距離にいれば怖くないです。ただ、りゆは優香がトップスピードに入りきる前に、いつ自分から仕掛けていくか決めて行かないと勝つのは厳しそう。」

動画5:32〜

前田「りゆはもう仕掛けないと、これは間に合わない。」

最終周回のバックストレートで太田は必死に伸びようとするが、小林は前を譲ること無くフィニッシュラインを駆け抜けた。

前田「りゆが仕掛けられるタイミングは沢山あったけど、勇気を持って仕掛けにいけなかった、優香を待ちすぎてしまったのが敗因でしょう。優香は2本目の様な自分の勝ちパターンに、3本目も無理やり持って行って自分のレースを作ったことが良かったと思います。
りゆは、2本目の反省を踏まえて優香の逃げに対し反応できていましたが、距離を詰めて追いついた時点でそのまま捲りに行かないとスピード差がつかないので、勝負が出来なかったと思います。3コーナーでまくりに行って膨らんでいたので、そこもロスにつながりましたね。」

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