UCI(国際自転車競技連合)は、2026年6月2日から4日にかけてイタリア・デゼンツァーノ・デル・ガルダで開催された理事会において、ロシアおよびベラルーシのアスリートに関する規定を変更することを決定した。
今回の決定は、2026年5月7日に国際オリンピック委員会(IOC)理事会が出した最新の勧告に基づくもので、2022年の軍事侵攻開始以来続いてきた制限措置の大きな転換点となる。
ベラルーシ:特別規則の対象から除外、全面復帰へ

『2025香港インターナショナルトラックカップ I』にAINとして出場したハンナ・ツェラク(ベラルーシ)
今回のリリースでの最も大きな変更は、「ベラルーシが特別規則の対象から完全に除外された」こと。
これにより、ベラルーシのナショナルチームおよび個人選手は、UCIワールドカップや世界選手権を含むUCI管轄下大会への参加が正式に許可されることとなった。また、これまでは国旗、エンブレム、シンボルの使用制限があったが、これらの制約も撤廃される。
ロシア:ジュニア選手の申請免除・チーム種目への参加容認
ロシアについては部分的に制限が緩和されることになった。
ジュニア選手のAIN申請免除
ロシア国籍のジュニア選手およびそのスタッフは、今後、国際大会出場に際して必要だった「個人の中立アスリート(AIN)」ステータスの個別申請義務が免除される。
ただし、中立性の要件(国旗やエンブレムの使用禁止、ジャージや機材へのロシア関連表記の禁止など)は引き続き必要となる。
チーム種目への参加容認
これまでAINとして出場する選手たちは、個人種目にしか出場ができなかった。それが今後は、チーム種目においてもAIN選手同士でチームを組んで出場することが可能になる。
2022年から行われてきた制限措置

『2025年世界選手権トラック』にAINとして出場したアリナ・リシェンコ(ロシア)
自転車競技界における両国への対応について、2022年からの時系列は下記の通り。
2022年3月:厳格な措置の即時施行
ロシアによるウクライナ侵攻を受け、2022年3月、UCIは特別会議を実施。ロシア・ベラルーシのチームや選手への出場禁止、両国でのイベント開催中止などの厳しい措置を決定すると同時に、ウクライナの選手たちをエーグル(スイス)にあるWCC(World Cycling Center)に招き、競技活動を支援することが発表された。
この決定直後、カナダ自転車競技連盟は「『オリンピック休戦』の誓いに反するロシア・ベラルーシ政府の侵略行為に対し、UCIおよびIOCが強く非難したことを受け、カナダ自転車競技連盟もこの非難の姿勢に同意します」と発表。ネーションズカップへの両国ナショナルチームの出場不可を表明するなど、世界的に統一された対応が行われた。
2023年6月:制裁の緩和とAINの導入
侵攻から1年以上が経過した2023年、IOCの提案を支持する形で、UCIは「中立的な個人アスリート(AIN)」としての復帰を一部承認。これにより、一定の条件を満たした選手が個人として国際舞台へ戻る道が開かれた。
2024年7月:AINとして4選手がオリンピック自転車競技に出場
2024年夏に行われたパリオリンピックには、軍・治安部隊のスポーツクラブに所属する選手の公式リストなど、さまざまな情報源を元に審査が行われた結果、ロードレースに4選手が出場。
オリンピック期間中も「ロシアやベラルーシの政府や国家の役人は、パリオリンピックに招待も認定もされない」「パリオリンピックのどの行事でもロシアやベラルーシの国旗、国歌、色、その他いかなる識別情報も掲示されない」というルールが徹底された。
ロシア男子
グレブ・シリーチャ(Gleb SYRITSA)
※ロシアの男子選手アレクサンドル・ヴラソフ(Alexandr VLASOV)も招待を受けたが、辞退している
ロシア女子
タマラ・ドロノヴァ(Tamara DRONOVA)
アレナ・イヴァンチェンコ(Alena IVANCHENKO)
ベラルーシ女子
ハンナ・ツェラク(Hanna TSERAKH)
※正式には「ロシアのパスポートを持つ選手」「ベラルーシのパスポートを持つ選手」の表現
2026年6月(現在):ベラルーシの全面復帰とさらなる緩和
そして今回の理事会により、ベラルーシの全面復帰と、ロシア人ジュニア選手への負担軽減が決定。
UCIは今後も、ウクライナの自転車競技連盟への支援を優先事項としつつ、IOCの方針に沿って、「アスリートが国籍によって差別されない権利」を保護していく姿勢としている。