毎年年末に行われるKEIRINグランプリシリーズ。
初日となる12月28日(日)には「ヤンググランプリ2025」が開催され、若手競輪選手ナンバーワンの座を狙う9人の実力者が平塚競輪場に集結する。

ヤンググランプリの中で唯一、トラック短距離の選手としてナショナルチームにも所属しているのが中石湊。125期として2024年に競輪選手としてデビューし、2年目で手にした大舞台となる。

10月には世界選手権への初出場を果たし、年末に再び大きな舞台を控えた今、何を思うのか。ヤンググランプリに向けた企画として実施したロングインタビューを掲載する。

世界選手権で気づいた自分の弱点

Q:世界選手権の初出場を終えていかがでしたか?

周りから「行くのと行かないので全然違うよ」とよく聞いていたんですけれど、それをとても実感しました。予選で負けたり、1㎞タイムトライアルでも決勝に上がれなかったりとか、色々な体験をしましたが、思うような結果ではなかったのでやっぱり悔しさはあります。
でも世界選手権に行ったことで、「世界選手権のような大会で活躍できる選手になりたい、もっと勝てるようになりたい」という気持ちが強くなって、これからは色んな視点から練習をしていきたいと思いました。

Q:悔しい結果となり、具体的に改善していきたい点などはありますか?

今までは、がむしゃらに練習してきました。その分、もちろん強くはなるのですが、どうして強くなったのか自分でもわからないというケースが多くありました。全部全力で、自分でも整理できていなかったんです。

だから来シーズンは、120%を出して練習することはもちろん、しっかり頭を使い、目標を立てます。どの調子が自分に合うのかなど、色々考えながら日々を過ごしていければと思います。強くなった理由が自分でわかる状態にして、より強くなれるシーズンにしたいと考えています。

Q:これからの課題は現時点で見えていますか?

はい。課題に関しては自分で理解していたのですが、全日本選手権や世界選手権を直前に控えたタイミングで取り組むのは難しいものでした。悪い部分を改善するために新しいことをすると1回タイムが沈んでしまう。世界選手権のチケットを手にできるかどうかの瀬戸際で、急に変えることはできなかったんです。

なので、今のスタイルが良くないことは分かっていたんですけれど、今年は一旦脚力だけをつけていく方向にしました。世界選手権を終えた今、自分のダメな部分をより実感しているので、来シーズンではしっかり改善していきたいです。

Q:中石選手の思う、自分のダメな部分はどんなところなのでしょうか?

ひとつは、力んでしまうことです。パワーに関してはガッツリ伸びたんですけど、スキルが伴っていないので、自転車に力が全然伝わっていないように思います。そして力みやすい分、1本走った後の疲れも他の選手よりも大きい。

例えばハロンの助走でも、余計な部分で力を使いすぎて、大事なところで力が残っていないみたいなことも多いんです。体感とか広背筋とか必要な部分にはしっかりと力を入れて自転車を押して、握力とかはリラックスさせて、本当に必要なところで力を入れられるようにしたいです。レースだと「全力を出さなきゃ」と思ってしまうことは当然なので、日々の練習から力の使い方を意識して、無意識でコントロールできるような練習をしないとダメだと思っています。

Q:“力みすぎていたところ”がこれまでの弱点の一つということですね。

そうですね。ダッシュ力は悪くないと言われているのですが、スタートとか大事なところで後輪がスピンしたり、前輪が浮いたり、落車したりしていたんです。すべて力でカバーしようと思っていましたが、根本的なスキルも足りていなかったんじゃないかなと思います。ケイリンの道中でもずっと力んでいるので脚がパンパンになって、飛び付かないといけないところで飛び付けなかったりとか。もっと頭を使って、脚力よりもスキル面を充実させたうえで、120%を出し続けないと、そう思っています。

自分だけが世界を知っている

Q:今年初めて世界選手権に出場して、特に印象に残っている選手やレースはありますか?

ケイリンで初めてハリー・ラブレイセン(オランダ:2025世界選手権短距離4冠)選手と戦うことができたことは、とても印象に残っています。ラブレイセンは、決勝での優勝を見据えて予選や準決勝などを戦っている印象を受けました。
(同組となった敗者復活戦では)残り2周のタイミングで自分が仕掛けて先頭に出ましたが、すぐにはかわされずにちょっと粘れたように感じています。

自分の武器はダッシュだと思っていますが、(太田)海也さんやオランダのジェフリー・ホーフラント選手などダッシュが強い選手はたくさんいて、世界レベルで見るとまだまだ歯が立たない。世界選手権では得意な部分も全然出せなかったので、ダッシュ力とその後の持続力もまだこれから磨いていければと思っています。

Q:改めてヤンググランプリの出場者を見ると、国際レースへの出場という面で見ると経験値が群を抜いている気がします。その点は自信は感じていますか?

そうですね。どうなるか全くわからないんですけれど、自信はめっちゃあります。今は自信しかないです。

まとめてリベンジが叶う一戦

Q:出場メンバーの中で、意識している選手はいますか?

2024年にデビューして、一回17連勝までいって特別昇級がかかっていたレースで負けた松崎広太さんがいるので、また戦えることにワクワクしています。
そのレース以来一緒に走る機会がなかったので、リベンジじゃないですけど倒したいですよね。

Q:当時はどんなレースで松崎選手に敗れたのでしょうか?

123期ばかりのレースで、先頭に3人のラインと中段に2人のライン、その後ろに僕ともう1人がいたんですけど、負けられない戦いだったのでラスト1周で仕掛けに行ったんです。でもちょっと変なところで行っちゃったこともあって、タイミングを合わされて3着になってしまいました。
その時、番手発進で優勝したのが松崎さんでした。

Q:なるほど。同期では阿部英斗選手(元ナショナル)や森田一郎選手(元ナショナル)などが出走予定ですね。

123期にも負けたくないし、全員に負けたくないですが、125期の選手と走る機会はなかなか無いので楽しみです。2人にはルーキーシリーズで敗れているので、そこでも今回リベンジができるなと思っています。

Q:借りのある選手がたくさんいるんですね。

篠田(幸希)さんも戦ったことがあって、負けているのでリベンジ戦ですね。まとめて一回でリベンジできるので楽しみです。

Q:まとめてリベンジ(笑)。ヤンググランプリの優勝者には、松井宏佑選手、小原佑太選手、菊池岳仁、太田海也、そして深谷知広選手など、ナショナルチームに所属している、所属していた選手が多く名を連ねていますが、そこに続きたいという想いはありますか?

もちろんです。勝ちたいという気持ちがありますし、歴代強い選手が優勝してきているので、みんなに続いて勝たなきゃなと感じています。

人生を変えた映画『イエスマン』

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