世界選手権 スクラッチで史上初のアルカンシェルを獲得するという偉業を果たし、素晴らしい形で2024年のシーズンを終えた窪木一茂。
2025年シーズンは、愛三工業レーシングチームへの加入もあり、心機一転で迎えることとなった。
世界一として迎える今シーズン、そしてさらに4年後に向けては、何を見据えているのか。
沖縄合宿に潜入したMore CADENCE編集班。新年を迎えた世界チャンピオンに語ってもらった。
世界チャンプの目標は、「もっと強くなる」
Q:世界チャンピオンとして迎える2025年。所属チームも変わりましたが、どのような年にしていきたいですか?
自転車も、ジャージも、所属するチームも変わりますが、変わらないのは「自分自身がもっと強くなる」ということです。特に、今年は肉体改造していきたいと思っています。もっと力強く、もっと速く、もっと長くモガけるように。今年は競輪に参加する機会も増えてくるので、1着を獲れるような準備をしていきたいと思っています。
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※シーサーはプロテインではありません
Q:世界チャンピオンでも、目標は「更に、もっと強くなる」……。
世界選手権が終わってからオフを長く取りました。年末年始も中長距離チームはオーストラリア遠征がありましたが、自分はあえて行かずに、日本でウェイトトレーニングと食事改善、乗り込みを行なってきました。いま、体を変えている真っ最中、というところです。すぐに強くはなれないですが、4年後を見据えて体を変えていきたいと思っています。
ロードレースでは登りに対応できる選手になること。それから、競輪での悔しかった気持ちが大きいので、短距離の選手にも負けないように強くなりたい。More CADENCEは競輪選手も見てるから、あんまり下剋上的なことを言うと怒られそうですが(笑)。
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Q:昨年の競輪祭でのレースを見ると、純粋なスプリンターたちを相手にトップのスピード域で戦うことの難しさは感じました。
もちろん、敵うわけがないというのはわかっています。競技では良い成績を出すことができましたが、昨年は競輪では散々な結果でした。でも、それが僕の肥やしになっているので、悔しくもあり、嬉しくもありましたね。
競輪祭が終わった後、ダニエルコーチからは「競技に向けて調整をしていたなかでの参加だったのだから結果は仕方ない」と言われましたが、そんなことは言っていられない。「もっとスプリントの練習をしたいし、肉体改造したい」ということを伝えました。「No。いまのフィジカルで十分だ」と言われたのですが、「もう一段階強くなりたいんだ」と伝えて、なんとかコーチの同意を得て、肉体改造に励んでいます。
Q:たしかに、一回り大きくなったと言うか、筋肉隆々な感じがします。
みなぎっています。
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理想の太ももを手に入れたい
Q:肉体改造というと、具体的にはどういった部分を追求していくのでしょうか?
スピードとパワーをつけたいです。そのために、筋肉量を1kg上げたいと思っています。
Q:中長距離選手の中では、すでに窪木選手のスピードとパワーはトップクラスだと思います。
ありがとうございます。
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Q:それでもさらに、というのは競輪に活かすためですか?
僕は、ギアをかけてぶん回せるタイプ。一方で競輪はギアが軽いので、密接に関係するかというと微妙なところではあります。でも、パワーはロードでも使うし、競輪でも使える。理想の太ももになりたいんです。
Q:もうなってるのでは……?
なってないんですよこれが。全然なんです。いまは58cmくらいですが、とりあえず60cmですね。(中野)慎詞が65cmで、あれにはなれないですけど、養成所の時は僕も60cmあったので。理想の太ももを手に入れた僕は、すごく強くなると思います。
ロードレース、競輪、競技。全部をつなげる
Q:ロードレース、競輪、競技。全部をやりたいってことですよね?
全部をつなげたいです。競輪ではありがたいことにS級の舞台でやらせてもらっていますが、僕の努力が足りていないために勝負できていない。もちろん、国内のロードレースも頑張りたいという気持ちは変わらないです。競輪で勝つことでロードのことももっと知ってもらいたいですし、これは僕にしかできない挑戦だと思っています。
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Q:「なにかを成し遂げたいのであれば、ひとつに絞れ」というのがセオリーだと思うのですが、すべてを追うなかで結果も出している、というのは素晴らしいことだと思います。
もちろん、たくさん三振もしてきましたよ。それでも、去年アルカンシェルを獲ったことで、ひとまず担保ができたような感じはあります。
ひとつ達成したことで、もう失うものはないと言うか、どう転んでも良いというか……周りからのプレッシャーに対してなにかをしなきゃ、というのはもうありません。
Q:世界チャンピオンになって、なにか変わったことはありますか?
自転車関係の方からお祝いの言葉をもらいますし、ジャージを着て過ごしているとファンの方から声をかけていただいたり、写真撮影をお願いされることも多くなりました。昔の知り合いとか友人からも連絡をもらうことも多くて、沖縄でも、以前イタリアにいた時の通訳さんがホテルに来てお祝いしてくれました。
Q:宝くじ当たった人みたいな(笑)。
僕自身にとっても、すごく自信になりましたね。より加速させられるというか、モチベーションが上がる要因になりました。
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インタビュー後編では、「悔しさが上回った」と語る2024年を振り返ってもらいながら、4年後に向けた思いに迫る。