「市田、余裕そうじゃん」と言われるとめちゃくちゃ悔しい

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憧れの1kmライダーは?

Q:やっぱり、1kmへのこだわりがありますか?

高校・大学と専門でやってきていますし、それで結果もついてきているので、こだわりはありますね。

Q:クリス・ホイ(英)、ジェフリー・ホーフラント(蘭)、去年の世界選手権ではハリー・ラブレイセン(蘭)など、1kmが強い選手は例外なくほかの個人種目も強い傾向にあります。市田選手も、1kmTTはすべてに通じる、と考えていますか?

はい。1kmTTがベースにある、と思っています。

Q:お父さんもそういう考え方なのでしょうか?

いや、父はそうでもないです。自分も、高校の時は単純にカッコいいなと思って1kmTTをやっていて、たまたま結果が出すことができたというだけでした。大学に入って、ホーフラント選手の動画とかを見て研究するなかで「ベースが強いとなんでもできるんだな」と思うようになりました。

ジェフリー・ホーフラント,Jeffrey Hoogland,男子1kmTT, Men's 1km Time Trial, 2024世界選手権トラック バレラップ, 2024 UCI CYCLING WORLD CHAMPIONSHIPS TRACK

ジェフリー・ホーフラント

Q:憧れの1kmライダーはいますか?

やっぱりホーフラントですね。ちゃんとしてるというか、トータルで綺麗にすごいと思います。
他の人と比べると、スタートがめちゃくちゃ早いわけではないし、持久力がずば抜けているわけでもない。エアロポジションも、究極ではないというか、突き詰められる部分がまだ本人の中にあると思うんです。そのなかでも結果を出しているし、トータルでレベルが高い。一番良い選手なんじゃないかなと思います。

もし、究極の1kmTTができたら

Q:いまのナショナルチームで1kmTTにこだわりがあるのは、中石湊選手と市田選手だけだと思います。

中石もこだわってますね。

Q:新田祐大選手、そして中石選手もですが、終わった後の表情が最高ですよね(笑)。市田選手はケロッとしているタイプなので、あれくらいになってもらえると写真映えがするのですが?

中石湊, 男子エリート, 1kmTT, 2024全日本選手権トラック, 伊豆ベロドローム

中石湊

“あれ”をやりたい、という気持ちは一切ないですよ(笑)。でも、僕のなかの“究極の1kmTT”ができたら、自然と“ああ”なってるのかなと思います。

Q:アジア選手権の1kmは楽しみですか?

楽しみです。

Q:優勝したら、アジア王者として世界選手権の切符も手に入ります。

そうなったら、トレーニングのモチベーションも大きく上がると思います。仮にそうならなかったとしても、自分の限界、目指すところがもっと先にあるということを知ることができます。どっちにしてもモチベーションがめちゃくちゃあがりますね。

Q:話を聞いていると、ちょっとマゾ的というか、挑戦するのが好きなタイプに聞こえます?

それはあるかもしれないですね。明確な目標があると、そこに向けてズンズン踏み込んでいくタイプです。挑戦的だと思います。

Q:現時点での“明確な目標”は?

競輪ではグランプリ、競技では世界選手権の1kmTTでアルカンシェルが欲しいです。
ただ、そこはまだ見えていないというか、未知の世界。まずは、アジア選手権をしっかりとやり切ることが目標です。

ザ・体育会系ならではの困惑

Q:種目は違いますが、目の前にアルカンシェルを獲った選手がいるとモチベーションもあがりますか?

うーん……むしろ、自分はどうすればいいのか、ということを考えこんでしまいます。
(山﨑)賢人さんや、オリンピックに行ったメンバーがそこにいる。自分とはなにが違うんだろうって。でも、本人に直接聞くことはあまりできなくて。

Q:聞けば良いのに、と思ってしまいます。

基本的にはいつもジェイソン(・ニブレットコーチ)に言ってます(笑)。
本当に我慢できなくなったら先輩方にも聞きますが、そういう時は自分のなかで「こう返ってくるだろう」っていう答えを用意して質問しますね。それとどれくらいずれているか、というところを重視しています。

Q:しっかり、日本の体育会系の教育が叩き込まれてる感じがしますね(笑)

ですから、このナショナルチームに来て一番びっくりしたのが、「フランクさ」ですね(笑)。
僕はそんなにフランクにいけないなって思いました。

Q:後輩に厳しいタイプですか?

いや、後輩にはなるべく優しく言ったり、一緒にやったりしたいと思っています。やっぱり、体育会系の良くない部分も知っているので。先輩が気を使いつつ、後輩がそれを察してついてくるというのが理想だと思っていたんですけど……ここはフランクすぎます(笑)。

ご飯が一番びっくりしましたね。僕、ご飯の時は絶対喋らないんですよ。基本的には黙食を貫いてきたのですが、沖縄に来てみたらみなさんフランクで(笑)。チームとして合宿するのは初めてなので、「なんなんだこれは……」と戸惑っています。

市田龍生都プロフィール

2001年9月28日生まれ(執筆時点では23歳)。福井県出身。2025年の競輪選手としてのデビューを飾り、今はナショナルチームにも所属する。父は、師匠でもあり福井支部所属選手として初のGIタイトルホルダーとなった市田佳寿浩。

小学校までは水泳、中学校では陸上、そして高校から自転車競技を本格的に始める。中央大学に進学途中でナショナルチーム入りを果たすが、一度学業に専念するために離脱。2024年に日本競輪選手養成所に入ると、この期で唯一となる早期卒業を果たし、2025年にプロの競輪選手としてデビュー。

生粋の1㎞タイムトライアル好きとしても知られている。

高校時代の主な成績

2018年 福井国体 1000mTT / チームスプリント 優勝
2018年 全国高校総体(インターハイ)1000mTT 優勝
2019年 茨城国体 チームスプリント / 男子ケイリン 優勝
2019年 全国高校総体(インターハイ)1000mTT 優勝

大学時代の主な成績

2021年 全日本大学対抗選手権自転車競技大会 チームスプリント / ケイリン / 1kmTT 優勝
2022年 全日本大学対抗選手権自転車競技大会 チームスプリント / ケイリン / 1kmTT 優勝
2023年 全日本大学対抗選手権自転車競技大会 チームスプリント / ケイリン / 1kmTT 優勝
2023年 全日本自転車競技選手権大会トラック・レース(エリート) 1kmTT 1位
2023年 全日本学生選手権トラック自転車競技大会 1kmTT 優勝