2024年8月9日、パリオリンピックの自転車トラック競技種目の5日目には男子スプリントの準決勝〜決勝戦が行われた。
ハリー・ラブレイセン(オランダ)、マシュー・リチャードソン(オーストラリア)、予選で世界記録を塗り替えた超人たちの頂上決戦を制したのはラブレイセン。オリンピックでの通算金メダル数を「4」とする勝利でこの種目の2連覇を果たした。日本から出場した小原佑太・太田海也は前日のレースで敗退している。
本記事では頂上を競った4選手の熱戦の行方をお届けする。
スプリント
予選は200mFTT(助走なしの200mタイム測定)。予選のタイムをもとに本戦(対戦ラウンド)の組み合わせが決定し、勝ち上がり戦が行われる。本戦はトラック3周、1対1で先着を争う。どんなに強靭な選手でも3周を全部フルパワーで走ることはできないので、どのタイミングで前に出るのかの駆け引き、そして一気にハイスピードになる高速バトルが見どころの種目。
決勝 世界記録更新の怪物たち 時速75km越えの勝負
3日間にわたる勝負を勝ち抜いて決勝に辿り着いたのは、ハリー・ラブレイセン(オランダ)とマシュー・リチャードソン(オーストラリア)。2人はともに予選で世界記録を塗り替える信じられないスピードを見せて、下馬評通りの強さで勝ち上がってきた。ラブレイセン、リチャードソンのいずれも、すべての敵をストレートで倒しての決勝進出となり、文字通りの頂上決戦の舞台となった。
1本目、ラブレセインが前、後ろにリチャードソンでレースはゆっくりと1周目が進む。2周目に入ると、ラブレイセンが前で直線的にスピードを上げていくが、自転車1つ分程度の距離でリチャードンソンが付いていく。
最終周回に入る前に全開で踏みこんでいくラブレイセン、一方のリチャードソンはバンクの上部へ駆けあがり、傾斜を使ってスピードを更に上げて仕掛けていく。残り200mのラインを切ると、お互いが全力となったスピードバトル。リチャードソンが外からラブレイセンに並びかけていくが、最終ストレートで更に一つスピードを伸ばしたのはラブレイセン。車輪1つ程度の差を保ち、1本目を先着した。
2本目。リチャードンソンが前、ラブレイセンが後ろとなって、レースは決勝独特の緊張感を持って進んでいく。スタートして1周は静かにお互いを見ていた両者だが、後ろのラブレイセンが走路の上や下に動き出し、リチャードソンに後ろからプレッシャーをかけていく。
残り1周半。ラブレイセンがバンクの上部に駆け上がると、勝負は一気に加速していく。前へと行く素振りを見せながらスピードを上げていくラブレイセン。一方で前方の位置をキープしたいリチャードソンだったが、主導権をラブレイセンに握られているような状態で動きが後手後手になってしまう。最終周回前に逃げたのはリチャードソンとなったが、走路の最上部から傾斜を利用して猛スピードでラブレイセンが並びかけていく。
3、4コーナーではどうなるか分からない勝負だったが、最終ストレートで外からリチャードソンをかわしたラブレイセン。一気にフィニッシュラインを通過し、オリンピックの舞台でスプリント2連覇を果たした。これで今大会、チームスプリントに続いて2つ目の金メダルを獲得したラブレイセン。残すは東京大会で逃したケイリン種目(銅メダル)でも金メダルを狙う。
3位決定戦はジャック・カーリン 2大会連続の銅メダル獲得
3位決定戦は3本目までもつれ込むレース。1本目はジャック・カーリン(イギリス)、2本目はジェフリー・ホーフラント(オランダ)、そして3本目の決定戦はカーリンが制して銅メダルを獲得。カーリンにとっては東京大会に続き2大会連続の銅メダルとなった。
3本目はカーリンがホーフラントにぶつかる形で再走が発生。更には判定に時間を要する走行があり、オランダチームからの抗議で進行が遅れるなど、物議を醸す結果となった。最終判定はカーリンの勝利となったが、観ている観客も相手側だったオランダチームも腑に落ちない結果となった。
順位 | 選手名 | 所属 | |
1位 | ハリー・ラブレイセン | LAVREYSEN Harrie | オランダ |
2位 | マシュー・リチャードソン | RICHARDSON Matthew | オーストラリア |
3位 | ジャック・カーリン | CARLIN Jack | イギリス |
6位 | 小原佑太 | 日本 | |
7位 | 太田海也 | 日本 |