2024年8月8日(日本時間9日0:00)、パリオリンピックの自転車トラック競技種目の4日目には女子ケイリンが実施された。前日に行われた1回戦・敗者復活戦を勝ち上がった佐藤水菜&太田りゆが世界の頂点へ挑んだが、表彰台には届かず。日本人選手たちの奮闘を中心にレースのレポートをお届けする。
ケイリン
日本の「競輪」がルーツの種目。なお日本から出場する佐藤水菜&太田りゆはともに競輪選手。
トラックの6周の着順を競うレース。3周までは先頭誘導をする「ペーサー」が先頭を走り、風除けをしながら全体のスピードを上げていく。
ペーサーが離脱すると、残り3周のスプリント勝負!選手それぞれの得意分野、作戦が巧妙に絡み合う種目。
準々決勝 太田は粘りの勝ち抜け
全3組。2組に太田、3組に佐藤となったレース。まずは太田が準々決勝を勝ち上がっていく。太田の組には2023世界選手権スプリントチャンピオンのエマ・フィヌカン(イギリス)、東京2020スプリント金メダルのケルシー・ミシェルなど強豪が揃う。隊列は3番手にフィヌカン、4番手にヘッティ・ファンデヴォウ(オランダ)、太田、ミシェルの順。
残り3周を切ってまず動いたのはファンデヴォウ。位置を一気に上げていくと、その動きに合わせてフィヌカンも動き出していく。太田はこの動きに合わせてフィヌカンの後ろに続いていく。残り1周半でフィヌカンが先頭に出ると、太田はファンデヴォウと横並びの並走となり、苦しい状態。一方で内側にいたレベッカ・ペッチ(ニュージーランド)が位置を上げてくる。
最終周回へは4番手となって突入した太田。前に3人が凌ぎを削る中、諦めずに踏み続けると、位置を変えずにそのまま4着で粘りの勝ち抜けを決めた。
厳しい現実 佐藤が勝ち上がれず
佐藤の3組は開催国期待のエース、マチルド・グロ(フランス)、ドイツの強豪エマ・ヒンツェなど、油断できない強敵が揃った。佐藤は隊列の5番目でレースを開始する。ペーサー退避の残り3周を前にして、最後尾だったヒンツェが位置を上げていくと、レースは一気にヒートアップしていく。残り2周半で先頭に立ったヒンツェ、そしてグロは4番手、その後ろにケイティー・マーシャン(イギリス)、最後尾に佐藤となる。今度はグロが4番手から仕掛けて、残り2周で先頭へ。ここで5番手だったマーシャンが動き出すと、その後ろには佐藤も続いていく。
残り1周半で2番手だったヒンツェが外に張り出すと、マーシャンが失速するが、佐藤は前へと位置を上げていき、最終周回に入るところではグロ、ヒンツェ、そして3番手争いに3人が続く。佐藤は3番手争いの大外を走っていく。
最終周回。大外から佐藤が仕掛けていくが、ヒンツェが外に張り出し、マーシャンも外に出てきて、佐藤の前には壁ができてしまう。それでも諦めずに踏み込んでいった佐藤だったが、前が開かずにフィニッシュラインへ5番目に飛び込む形となった。勝ち抜けはグロ、マーシャン、ヒンツェ、そして内側で粘ったルス ダニエラ・ガシオラ ゴンザレス(メキシコ)の4人。佐藤は5着となって準々決勝を勝ち上がることは出来なかった。
準決勝 太田、積極的な仕掛け
準決勝は強豪揃いのレース。3着までに入れば決勝進出、それ以外は7-12位決定戦へと回る。対戦相手は以下の通り。
ニッキー・デグレンデル(ベルギー) |
ヘッティ・ファンデヴォウ(オランダ) |
太田りゆ(日本) |
ケイティー・マーシャン(イギリス) |
マチルド・グロ(フランス) |
エマ・ヒンツェ(ドイツ) |
隊列はグロ、マーシャン、ヒンツェ、デグレンデル、ファンデヴォウ、太田の順となって周回を重ねていく。積極的に動いていく選手たちにより、ペーサー退避の前にレースが動いていく。まずはファンデヴォウが残り3周半から外に出て位置を上げていくと、太田がその動きに続く。この動きを見た3番手のヒンツェも動き出して先頭へ。
残り2周で先頭争いはヒンツェとファンデヴォウ、後ろにマーシャン、そして太田が4番手。開催国エース、グロは5番手まで位置を落としていく。そしてここから太田が一気に仕掛けていく。ファンデヴォウが先頭になったところで太田が外から加速していくと、横並びになって先頭争いを繰り広げる。しかし内側でファンデヴォウに粘られた太田は前に出ることが出来ずに、最終周回では徐々に失速していってしまう。太田の内からはヒンツェ、外からマーシャン、デグレンデル、グロと太田を追い抜いていき、最後は6着で太田がフィニッシュ。決勝戦へと駒を進めることは叶わなかった。
決勝進出はファンデヴォウ、マーシャン、ヒンツェの3人。太田は7-12位決定戦へと回る結果となった。
7-12位決定戦 太田が絶好の位置から仕掛けるが届かず
ニッキー・デグレンデル(ベルギー) |
ステフィー・ファンデルピート(オランダ) |
太田りゆ(日本) |
リー ソフィー・フリードリッヒ(ドイツ) |
マチルド・グロ(フランス) |
レベッカ・ペッチ(ニュージーランド) |
レースは残り2周でフリードリッヒ、グロ、続いて太田は3番手と絶好の位置となる。先頭でフリードリッヒがスピードを上げていくと、隊列は一列棒状のまま最終周回へ。最後の半周でグロと太田が外から攻めていくが、フリードリッヒが逃げ切りの1着。2着にグロ、3着は外から攻めた太田となった。
この結果、太田の人生初のオリンピック出場種目となった女子ケイリンでの最終結果は9位と決定。東京大会での小林優香の成績(16位タイ)を上回る、日本人歴代最高位となった。
決勝 アンドリュースの着実なステップアップ
4年に1度の頂上決戦。その舞台に立ったのは以下の6人。
ヘッティ・ファンデヴォウ(オランダ) |
ケイティー・マーシャン(イギリス) |
エマ・ヒンツェ(ドイツ) |
エルレス・アンドリュース(ニュージーランド) |
エマ・フィヌカン(イギリス) |
ルス ダニエラ・ガシオラ ゴンザレス(メキシコ) |
アンドリュース、ヒンツェ、ファンデヴォウ、マーシャン、ガシオラ ゴンザレス、フィヌカンの並びで緊張感を帯びた隊列が周回を重ねていく。
レースは再びペーサー退避の前に動き出し、まずは5番手のガシオラ ゴンザレス、後ろのフィヌカンが位置を上げていく。ガシオラ ゴンザレスに先頭を譲ったものの、フィヌカンには2番手の位置を渡さずに2番手の位置をキープしたのはアンドリュース。そして残り2周を前にしてガシオラ ゴンザレスをかわして先頭へ再び位置を上げていく。アンドリュースの動きにはフィヌカンも付いていき、アンドリュース、フィヌカン、続いて内にガシオラ ゴンザレス、外にファンデヴォウとなって残り1周半。2番手のフィヌカンが仕掛けていくとアンドリュースとの激しい先頭争いとなって、最終周回へと入っていく。
並走して進むアンドリュースとフィヌカンだが、この競り合いを制したのはアンドリュース。自転車一つ抜け出すと内側で力強くペダルを踏みこんでいく。その後ろからは再度フィヌカンが仕掛けてくると、更に外からはファンデヴォウも上がってくる。
最終ストレートでも失速の様子を見せないアンドリュースが逃げ切って先着。そして2着争いは大外から伸びたファンデヴォウがフィヌカンをかわして2着。3着にフィヌカンの順番となった。
アンドリュースは東京2020オリンピック女子ケイリンでは銀メダルを獲得。2度目の挑戦となったオリンピックの舞台で見事に金メダル、そして世界の頂点に輝いた。
順位 | 選手名 | 所属 | |
1位 | エルレス・アンドリュース | ANDREWS Ellesse | ニュージーランド |
2位 | ヘッティ・ファンデヴォウ | van de WOUW Hetty | オランダ |
3位 | エマ・フィヌカン | FINUCANE Emma | イギリス |
9位 | 太田りゆ | 日本 | |
13位タイ | 佐藤水菜 | 日本 |