パリオリンピック開幕の3日前となる7月23日、UCIの「オリンピック出場枠」のリストが更新された。

直前に出場枠を得ることとなったのはナイジェリア。女子スプリントと女子ケイリンに1枠ずつ出場することが可能となった。

なぜオリンピック直前に枠が与えられたのか?詳細をお伝えする。

エジプト選手へのペナルティ

事の発端となったのは、エジプトの女子自転車競技選手であるシャード・モハメド(Shahd Saeed Mohamed)。エジプトは「大陸枠」の規定により、女子短距離個人種目(ケイリンとスプリント)の出場枠を獲得していた。この枠を割り当てられ、パリオリンピックに出場することになるはずだったのがこの選手だ。

大陸枠とは:
男女それぞれにおいて、ある大陸がいずれのスプリント種目の出場枠を獲得していない場合、その大陸のスプリントのオリンピックランキングで最高位の国内オリンピック委員会は、スプリント種目のために1つの出場枠を受け取る。

出典:Olympics.com

しかしモハメドは2024年4月に国内で行われたレースで、他選手を巻き込むクラッシュを発生させる。これが悪質だったということで、2025年4月まであらゆる国際大会への出場停止処分が行われた。

繰り上がりで初出場

この結果モハメドはパリオリンピックに出場できず、代替となる国内選手もいなかったため、パリオリンピックの女子短距離個人種目の枠が1つ空くこととなった。4月から7月まで長らく宙ぶらりんになっていたが、開会式を目前に控えた7月23日、アフリカ大陸で2番目につけていたナイジェリアがその枠を得ることとなった。

マリー・サムエル SAMUEL Mary, エセ・ウペセラエ UKPESERAYE Ese, タワカウト・イエキーン YEKEEN Tawakalt, NGR - Nigeria, Women's Team Sprint, 2022 Track Nations Cup, Glasgow, Great Britain

ナイジェリアのトラック競技はまだまだ発展途中。2021年に初めて世界選手権に出場し、2022年の世界選手権ではドイツチームにTTバーをプレゼントされるという一幕もあった。

オリンピックへの出場も、もちろんこれが初めてとなる。降って湧いたこのチャンス、直前すぎて準備も十分にできていないことが予想されるが、どのような結果となるのかぜひ注目したい。

【世界選手権での一幕】ドイツがナイジェリアにTTバーを贈呈 共に発展していくトラック競技

初五輪で「二刀流」の可能性も

エセ・ウペセラエ, UKPESERAYE Ese, NGR, 女子500mTT 予選, WOMEN Elite 500m Time Trial Qualification, 2023世界選手権トラック グラスゴー, 2023 UCI CYCLING WORLD CHAMPIONSHIPS TRACK Glasgow, Great Britain

エセ・ウペセラエ

女子トラックの出場枠を直前に得たナイジェリア。実は女子ロードレースの出場枠は、すでに1枠分獲得していた。

女子ロードレースへの出場が予定されているのは、1999年生まれのエセ・ウペセラエ(Ese Lovina UKPESERAYE)。男女含めナイジェリア人初のオリンピック自転車競技出場選手として選出された。

ウペセラエは2022年・2023年の世界選手権トラックにも出場している選手であり、2024年からはUCIウィメンズコンチネンタルチーム(ロード)「CANYON//SRAM GENERATION」にも唯一のナイジェリア選手として加入。2024年現在はイタリア・ジローナを拠点にチームメイトと活動している。

ベルナ・エバーハート EBERHARDT Verena, AUT, アマリー ウィンサー・オルセン OLSEN Amalie Winther, SPD, エセ・ウペセラエ UKPESERAYE Ese, NGR, ケイティ・アーチボルド ARCHIBALD Katie, GBR, 梶原悠未 KAJIHARA Yumi, JPN, Women's Omnium, 2022 Track Nations Cup, Glasgow, Great Britain

(左から4人目)エセ・ウペセラエ

2024年7月26日時点では、ナイジェリア女子トラック代表選手に関する情報は発見できない。エセ・ウペセラエがトラック代表にも選ばれれば、初のオリンピックにしてトラック・ロード二足の草鞋を履くこととなる。

ぜひ今後の動向をチェックしていただきたい。

出典:エジプトオリンピック委員会FacebookUCI最新オリンピック枠リスト(PDF)

なお本記事はエジプトオリンピック委員会のFacebook上の発表を参照したものの、アラビア語翻訳の技術的不安を補足するため、BBCなど複数の海外メディアを参考にしている。
参考:BBCRT ArabicAhram OnlineTrack PisteCANYON//SRAM GENERATIONCYCLINGNEWS