何が変わった?
イギリス自転車競技連盟の公式リリースにて言及された、”東京仕様”との主な違いは下記の3点だ。
その1:波打つようなギザギザフォーク
前輪を左右から挟み込むパーツである「フォーク」。東京仕様のバイクと同様、前輪との間に大きな空洞が設けられたデザインを採用しているが、フォーク後方側の表面がギザギザした形になっている。
この”ギザギザフォーク”について、Lotusが公開した動画に出演しているエド・クランシー(元中長距離選手)は、「従来よりさらに速い走行スピードの中でも、空気の流れを乱すことなく流線形に保つことができ、走行スピードを加速させる効果がある」と説明。
また、「改良により1%の空気抵抗の削減がなされ、1%のパフォーマンス向上が可能になる」 とも同動画内で語っている。
その2:二股シートポスト
「シートポスト」とはフレームからサドルに伸びているパイプ部分のパーツ。
公式リリースでは「split seat post」と記載。「分裂する」「二股の」という意味の「Split」。その名の通り、二股に分裂しており中間が空洞になっている。
その3:3Dプリントされたチタン製クランク
「クランク」はペダルとフレームを繋ぐパーツ。選手の漕ぐ力をバイクに伝える重要なパーツだ。
Renishaw社による3Dプリント技術で製造され、エアロ効果がさらに向上。さらにチタン製のクランクを採用することで、強度を維持しつつ軽量化を実現。
Renishaw社が手掛けたクランクとシートポストには、自社のロゴが大きくプリントされている。
関係者コメント
2024年4月29日に公開されたBritish Cyclingの公式リリースには、共同開発を行った3社からのコメントも記載されている。一部抜粋・意訳にてご紹介する。
「成功を収めるための最善のプラットフォーム」
ステファン・パーク氏(イギリス自転車競技連盟パフォーマンスディレクター )
自転車テクノロジーの歴史においてイギリスの自転車競技は長い間、世界をリードし続けてきたことで知られています。我々はトラックバイクにおけるスピード、効率性、イノベーションにおいて、新しい境地を開き続けます。
この見事なパリ仕様のトラックバイクを発表するために、開発チームは常に革新的なソリューションを追い求めてきました。我々の選手にはこのバイクと共に、「パリ2024オリンピック」で成功を収めるための最善のプラットフォームを提供できると信じています。
自動車開発からの応用
マーク・ストリンガー氏(Lotus Engineering社 Commercial Director)
「2024Hope-Lotus Olympic track bike」が象徴するように、Lotusとイギリスチームの長いコラボレーションの歴史は、自転車競技のパフォーマンスの限界を押し進めていくために非常に重要な役割を果たしてきました。この現在進行中のパートナーシップは我々の知見を高め、東京で証明された革新的技術をさらに向上させてきました。
我々は自動車開発において、他分野へ新たな見地を提案するために75年以上もの年月を費やしてきました。Hope-Lotusバイクはその長い年月で培った技術と知見を、我々が他分野に応用できることを証明する存在です。
「3Dプリント技術の限界」
ベン・コリンズ氏(Renishaw社 Lead Additive Manufacturing Application Engineer)
我々の3Dプリント技術により、さらに強く、軽く、洗練された自転車パーツのデザインが可能になりました。それは同時に我々の技術は他分野にも貢献できることを証明しています*。”新型オリンピックバイク”の開発における我々の目的は、オリンピックを走る選手たちに最高水準のパーツを提供することに加え、3Dプリント技術の限界を押し進めることにあります。
新型バイクを駆る選手の活躍が見られることを楽しみにしています。
※Renishaw社は精密測定とヘルスケア技術を専門とする工学・科学技術企業。自転車競技の分野は同社にとって「他分野」と言える。
「あらゆる自転車競技のサポートを」
イアン・ウェザリル氏(Hope Technology社 Director)
当社のスタッフ一同、この大きなプロジェクトに貢献できたことを誇りに思い、選手たちのパリでの活躍を期待しています。我々は本プロジェクトと並行して、シクロクロスやマウンテンバイク、そして子ども達が参加するアカデミーなど、あらゆる自転車スポーツへのサポートを今後も継続していきます。