中石「あ〜マジか……」
Q:今、中石湊選手が1kmTTの発走待ちです。あと4人。中石選手の今の心境を代弁すると、どうでしょうか?
「あ〜……マジか……ほんとに走るんか……」
Q:そしてリカバリータイム(次ラウンドまでの時間)は約30分です。
30分?ほんとですか?ありえない……1kmとか500mとかって予選と決勝があって、どういう風に走ってるんだろうと思います。
Q:でも、予選から出し切らないと。勝ち上がれないかもしれないですよね?
確かに。しかも(4km個人パシュートなどと違って)長くないからちょっとゆっくり、ってこともできないですよね。
……あ〜っそっか〜!!!うわあ、自分たちと概念が違いすぎてわかんない……
Q:走ってる時に応援は聞こえますか?
聞こえます。でも「わー!!!」ってなってることしかわからないことが多いです。ただチームパシュートの時はめっちゃ聞こえました。「いけー!」とか。応援してもらえるのは嬉しいです。
Q:チームパシュートなどでは走っている時にコーチが声をかけますが、あれは認識できますか?
はい、誰の声か判別できます。私は今回ブノワ(・べトゥ)さんと今村(駿介)先輩の声が聞こえました。「イケェ!!!」みたいな。
Q:なぜ彼らはこんな辛い1kmTT種目を続けられるんでしょうか?
それが楽しいからじゃないですか。「出し切った」感じが。
Q:池田選手も?
私の場合は脚が”爆発”する時としない時がありますけれど、1kmTTの人たちは100%”爆発”するじゃないですか!
Q:でもそれはチームパシュートにも共通する話なのかなと思いますが。
そうですけど、でもみんながいるじゃないですか。だから頑張ろうって思えます。
中石、スタートに立つ
Q:あ、そんな話をしていたら、もう中石選手がバンクに上がっていますね。今の心境はどうでしょう?
「オッス!!!!」って感じだと思います!やりたくないとは思うけれど、でもやんなきゃいけない。だから「オッシやるぞ!」とはなっていると思います。でも心の奥の方で「また1kmかよ……」って思っていると思います。
Q:「また」(笑)
中石くんめちゃんこ1kmやってるし……あ、でも「楽しみ」って言ってた気がします。朝に「楽しみ?」って聞いたら「あ、いや、まあ……」って。
あ、それって楽しみじゃないってことか……(笑)
Q:そういえば中石選手とは同級生になるんですか?
そうです。いつものふわふわ感じゃなくて、レース前はしっかりして見えますね。ギラギラ、集中しています。
Q:アジア選手権の1kmTTでは1分1秒が優勝ラインかなと思われるところですが……「アジアのチャンピオン」は、池田選手にとってどのようなものですか?
自分のチームパシュートで言えば「絶対勝たないといけない」というプレッシャーがありました。大陸選手権という事実に加えて、前回のネーションズカップ(2024シーズンの第1戦)では中国に負けちゃっていましたから。でも自分たちがどれだけタイムを出せるのかわからなかったから、めっちゃ緊張していました。
Q:中石選手のひとつ前の組のレースが始まりました。
うおー!やばいですね。(走っている選手から)見えない炎が見えます。やばいですマジで。(残り2周に入って)ここからは気合がヤバいです。
Q:ドリアンを食べるのと1kmTT、どちらが勇気が要りますか?
もちろん1kmTTですよ〜!絶対そう、ドリアンと比べちゃいけない。
……でもドリアンもやっぱり嫌です。
▶︎ドリアンの話はこちら
いざ戦場へ
Q:さて、いよいよ中石選手のターンです。発走機につきました。
うわー。もう「やるぞやるぞ」だと思います。でも緊張してる。心臓バクバク。タイムへの緊張というよりは、最初のスタートを「ボン!」といけるかと、あとは我慢勝負ができるかということへの緊張。「自分に負けないか」ですよね。きつい!ってなった時に諦めちゃわないこと、そこがマジ大事だと思います。
Q:スタート前に背中をジェイソンコーチに叩かれています。あれは気合が入りますか?
そりゃあもう、無言で叩かれますからね。「行ってこい……」みたいな。
Q:戦士を送り出す……さあ、スタートのカウントダウンが始まりました。
緊張しますよ〜……どんどん秒数が減っていくのが……いや普通のことなんですけど……
(スタートの動きを見て)うわ!めっちゃいいです!!
Q:良いスタートを切って、もうあとは行くだけですね。
行くだけです!
Q:さあ、一番きついという残り2周です。
この周回が一番きついです!うわーきついよきついよ!
Q:ここまで一番時計です。残り1周、もうあとは行くしかない!
行くしかない、行くしかないです。
あーやばいやばいがんばれがんばれここがやばい、ここが一番きつい、あーいけいけいけ(早口)
Q:1分2秒101、暫定1位でフィニッシュです!
あー、こっちまで呼吸がやばい!
Q:このあとラストの走者が走ってランキングが決まりますが、走り終わった中石選手のところへ行ってみましょう。……今ゆっくりペダルを漕いでいますが、この時ってもう痛みが出ていますか?
痛み爆発です。こう(ハンドル投げ)!して終わった瞬間にボカンです。とりあえず早く止まりたいって感情ですね。
Q:あ、倒れています!
あーやばいやばい、ありえないです。うわガチでやばそう(笑)
見てるこっちがやばいです、怖いよ大丈夫か、すごすぎる。
Q:色々お世話されてますね。
やってもらわないと脚が動かないと思います。
Q:やってみたいですか?
いや……練習なら……
やばいもうありえない。やばいですねあれは。
Q:この苦しみ、この苦痛。トラック競技の醍醐味ですね。こんなにスポーツって追い込むものなんでしょうか?
はい、追い込むもの!……えー、なのかな。それが味なのかもしれないです。
Q:追い込むの好きですよね?
ええ〜!???嫌いではないです。
言葉にするのが難しすぎる
Q:では、ここまでの解説ありがとうございました。
きつそうすぎる、言葉にするのが難しすぎる、でした。
「うえ〜!!!」ってなってることを言葉にしなきゃいけないから、解説の人って本当にすごいですね。
Q:また第2弾やりましょうね。
(笑)
自転車そんなに知らない人は、やっぱり結果しかわからない
Q:ところで今回(2024年2月)のアジア選手権、全体としてどうでしたか?
チームパシュートでちゃんと出し切れたのがまず嬉しかったです。でも個人種目(スクラッチ)が、やっぱり1番が欲しいけど、3番だったからすごく悔しかったです。しかもみんな勝っているのに自分だけ……ってとこもあって。
▶︎スクラッチ(銅メダル)のレースレポートはこちら
Q:でも日本チーム全体を見ても凄く見どころのある、ベストレースの1つだったと思います。
え〜そんなあ。でもそこで勝てる選手になりたいです。自転車そんなに知らない人は、やっぱり結果しかわからない。だからやっぱ悔しいですよね!なおさらっ!
でも内容としては、こういう時に攻めとかないと、ヨーロッパの選手の相手にならないし。脚をいっぱい使ってそれでも勝てるレースがしたいです。
Q:オリンピックに向けてメインで力を入れるのはやはりチーム種目になりますが、将来的には個人種目にも力を入れていきたいですよね。
今はまだ……私はあんまりいろんなことを考えられないので、とりあえず今は「TP(チームパシュート)!TP!TP!」って感じです。
Q:ところで大学の方は問題なく過ごせていますか?単位とか。
はい、良い感じです。
いや嘘です。良い感じではないです!今は春休みだから、課題で気づいたら夜中12時とか、「やばいあと○秒で提出期限!!」とかがないので、トレーニングに集中できてて最高です!