「2023世界選手権・グラスゴー大会」の5日目には男子スプリントの準決勝、決勝までが実施され、ハリー・ラブレイセン(オランダ)が5年連続となる自身5回目の金メダルを獲得。
レース後には10連覇を果たした日本のスプリントキングのことにも言及し「10回までは難しい」とコメントを残した。絶対王者のレースを振り返る。
男子スプリント
イギリス現地5日に予選と1回戦、6日に2回戦と準々決勝、7日に準決勝と決勝……と、普段と異なるスケジューリングで実施された男子スプリント。
準決勝まで勝ち上がったのは王者ハリー・ラブレイセン(オランダ)、2020東京で銅メダルを獲得したジャック・カーリン(イギリス)、日本の太田海也、寺崎浩平を倒して準決勝に勝ち上がったマテウス・ルディク(ポーランド)、そして200mタイムトライアルで現世界記録を保持するニコラス・ポール(トリニダード・トバゴ)の4人。
準決勝はラブレイセンvsカーリン、ポールvsルディクのカードとなるが、どちらも3本目まで持ち込むことはなく、ラブレイセンとポールが決勝進出を決めた。
スプリント王者vs世界記録保持者の頂上決戦
「4年連続世界チャンピオンのラブレイセンに、200mフライングタイムトライアルの世界記録を持つポールが挑む」。誰が観てもワクワクするカード、ハリー・ラブレイセン vs ニコラス・ポールとなった決勝は、意外なことにポールにとっては初の世界選手権決勝進出の舞台となった。
1本目、ポールが前、ラブレイセンが後ろとなりレースが進む。1周をお互いが睨み合いながらゆっくり経過すると、ラブレイセンが後ろでトラックの上下左右に動き出し、ポールにプレッシャーをかけていく。
しかし残り1周半で一気に加速したのはポール。驚異的なスピードで駆け抜けていくと、2車身ほど距離をとってラブレイセンが追いかけていく展開となる。快速で走るポールとの距離がなかなか縮まらないが、残り半周を切るとラブレイセンが本領を発揮し、一気に並びかけていく。ホームストレートではラブレイセンがポールを捕らえて先着する結果となった。
このレースの上がりタイム(最後の200mに先に入った選手と先着した選手がゴールラインに到達するまでの時間)は9秒787。予選のフライングタイムトライアルでもなかなか出せないタイムでもあるため、両者のレースが異次元のスピードでの勝負であることを実感させた。
2本目。ラブレイセンが前、ポールが後ろと1本目とは位置関係が逆となってレースが進む。2車身ほど距離を取って先頭をキープするラブレイセンは残り1周半で踏み上げていき、最終周回でフル加速していく。
一方でポールは前との距離が縮まらないため、最終周回に入ってからバンク上板に上がり、傾斜を使ってアタックしていく。しかし、フル加速したラブレイセンがポールに並びかけることを許さず先着。決勝を2本先取して、5年連続5回目のスプリント世界一の王座に輝いた。
尚、最終レースの上がりタイムは1本目よりも速い9秒654を記録した。
開催国のカーリンが3位
決勝よりも会場が沸いたのは銅メダル争い。開催国イギリスのジャック・カーリンがマテウス・ルディクと接戦を繰り広げ、2本ともに僅差となったがストレートでルディクを下して銅メダルを獲得。2回のフィニッシュ時には会場が盛り上がりすぎて、ベロドロームが揺れるほどの歓声となった。
選手名 | チーム | 予選タイム | ||
1位 | ハリー・ラブレイセン | LAVREYSEN Harrie | オランダ | 9.374 |
2位 | ニコラス・ポール | PAUL Nicholas | トリニダード・トバゴ | 9.529 |
3位 | ジャック・カーリン | CARLIN Jack | イギリス | 9.606 |