快適・ノンストレスな3人旅

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「捲りが怖い」を克服

Q:3人での海外レース、主な目的は「UCIポイントを獲得すること」そして「経験を積むこと」だったかと思います。

その通りです。経験は積めたと思います。でも私、最初は間違えて(ケイリンで)3周先行しちゃったんですよね。

Q:えっ、なぜですか?

後ろの動きに反応して、思わずパッと前に出ちゃったんです。本当は前に他の選手を入れて、そうしながら前に上がっていくつもりだったんですが、ペーサー退避のタイミングでパッとやってしまって。「あっ、(後ろが)来ない、ヤバい、出ちゃった〜……」みたいな。

そこから踏み上げず、流しつつ走りはしたんですが、私の脚質では絶対にやってはいけないことでした。そこで「捲りに構える覚悟をしよう」と思ったのですが、それって結構怖いことなんですよね。でもコーチに「怖がらずやってみろ」と事前に言われていて、やってみたらできた。そんなレースでした。結構嬉しかったです。

ガールズケイリンではやれますけれど、競技の250mバンクでの捲りってあまり自信がなかったんです。

Q:「捲りが怖い」とはどういう感情なんでしょう?

「(前に)出きれない」というイメージがすごく強かったんです。

「前を走っているバイクとの車間をあけて、自分のタイミングで捲る」という練習をやっているのですが、「レースでもその通りにやれ」と言われていました。

でも”バイクと私だけ”の状態ならうまくできるけど、実際のレースは違います。前に何人も人がいて、それを練習のように捲るというのは……自分の中でそれができるイメージがついていなかった。うまく繋がっていなかったんですよね。

今回やっと「ケイリンのレース中に捲りを行う」というのが繋がりました。1回だけでなく何度もやってみることができた点が、すごく良かったと思います。

練習したことが形として現れた

Q:最終日は1日でケイリンとスプリントの2種目をこなすハードさでした。2種目とも銀メダルでしたが、やはり課題としては体力でしょうか?

そう思っていたのですが、スプリントの最終レースも上がりタイム11秒2で走っているんです。しかも、そんなに無理した状態で走ってはなかった。自分でも意識してコントロールした上で、11秒2で差されていました。

これまで体力面が課題だと思っていたのですが、ニュージーランドでのレースに関してはそれが払拭されたと感じています。間が10分や15分しかないレースがたくさんあったんですが、1本1本ちゃんと回復して、心拍もほとんど元通り。すべてのレースできちんともがくことができていました。

※通常はレース間が20分程度空けられる

Q:ではそこは収穫?

かなり!しかもそれほど大きなダメージが無い状態で日本に帰国できました。夏にヘロヘロになって体調を崩してしまったイメージも大きかったのですが、今回は気温が高い中でもレース中モリモリご飯を食べることができたし、具合も悪くなりませんでした。

全部、練習してきたことなんですよね。「練習中にこれを食べ切る」ってことをずっとやってきましたし、練習では4本もがくことが多いのですが、1本多い5本やることもやってきました。食べる練習も、本数をこなすこともやってきていたので、それがニュージーランドのレースで形に出たのだと思います。良い収穫でした。

ただ、『ケンブリッジGP』では決勝・準決勝以前のレースでは余裕をもって走れる部分もありました。そういった要素も味方してくれたのかもしれません。でもそれは昨年(2022)のジャパントラックカップも同じで、以前の大会ではヘロヘロになってしまったことを踏まえると、やっぱり成長はあったのかなと思います。

これがネーションズカップとなるとそうはいきません。1本目から本気で走らなければいけないので、どう出るかはやってみなきゃわからないと思います。でもネーションズカップで7本も8本も走ることはないので、頑張れると思います。20分あれば回復できますからね。

実戦で体に染み込ませる

Q:他の収穫はありましたか?

スプリントに関しては「何それ初めて聞いたわ」みたいなことが結構ありました。スプリントの戦術はそれなりに学んできたし、ほぼほぼ実行できるようになったと思っていたのですが、今回初めて聞いたテクニックを試してみたら「なるほどね、良いじゃんこれ」と試すことができたことが良かったです。試すだけでなく、染み込ませるまで実戦でやれたんですよね。

Q:そういうのは、やはり練習で染み込ませるのは難しい?

はい、スプリントは実戦が重要だと思います。でも練習でも対戦練習をすることはありますよ。この間も(佐藤)水菜と3本勝負をしました。

Q:トータルして、実りの多い旅だったということですね。

そうですね。行く前は、私はそこまでポイントが切羽詰まってるわけでもないし、12月中の日本の競輪も結構詰まってたし、「なんで行くのぉお?」って思っていました。でも終わってから振り返ると、行って良かったです。本当にノンストレスで楽しくレースができたし、ここまでやってきたことを形として見ることができました。

Q:ネーションズカップ前のまとめとして、良いタイミングでしたね。

そうですね。今は追い込んでいて、計画通りに調子が下がっています。これはいつも通りのことで、伊豆に戻って休んで、最高の状態に持っていくという流れになります。

Q:では、もう準備万端?

調整が入ることで準備万端になるので、今はまだですね(笑)まあでも、できると思う、大丈夫だと思います。比較的楽しみです。前は「ヤダヤダ怖い」が多かったので、成長していますね。