2022年7月28日から8月8日にかけてイギリスで開催された『バーミンガム 2022コモンウェルスゲームズ』。

コモンウェルスゲームズとは、イギリス連邦に所属する国や地域が参加する、4年に1度の大規模な国際大会。2022年大会も自転車トラック競技を含め、多くのスポーツ競技の大会がイギリスのバーミンガム周辺の会場に実施された。

自転車トラック競技が実施されたのは、7月29日から8月1日までの4日間。4年に1度ということもあってか、有観客で開催された本大会の会場は大いに盛り上がりをみせた。

そんな本大会で観客を沸かせた選手の1人が、男子短距離選手のマシュー・グレーツァー(オーストラリア)。男子1kmTTに出場したマシュー・グレーツァーは、”ドロップバー”を使用したのにも関わらず「59秒台」の好タイムで優勝を果たした。

この結果を受け、オーストラリアチームによる”ドロップバー”の使用に注目が集まった。

本記事ではその詳細についてお届けしていく。

男子1kmTT 大会リザルト

大会最終日(トラック競技)の8月1日に実施された男子1kmTT。まずはその結果を見ていただこう。

オーストラリアのマシュー・グレーツァーとトーマス・コーニッシュが金・銀メダルを獲得。マシュー・グレーツァーは同大会チームスプリントでの優勝メンバーにも入っており、大会2枚目の金メダル。オーストラリアチームの大会メダル量産に貢献した。

3位には、同大会のスプリント・ケイリンでも表彰台入りを果たしたニコラス・ポールが僅差でランクイン。金銀銅を1枚ずつ獲得し、10月の世界選手権へ勢いを付ける活躍をみせた。

選手名 国名 決勝タイム
優勝 マシュー・グレーツァー Matthew Glaetzer オーストラリア 59.505
2位 トーマス・コーニッシュ Thomas Cornish オーストラリア 1:00.036
3位 ニコラス・ポール Nicholas Paul トリニダード・トバゴ 1:00.089

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オーストラリア勢はドロップバーで参戦

元スプリント世界チャンピオン(2019)であり、2022年シーズンでもオセアニア選手権で3冠を達成するなど、世界屈指の実力者であるマシュー・グレーツァー。

しかし、今回の優勝は異例の結果と言えるかもしれない。

なぜならマシュー・グレーツァーが駆った自転車に装備されていたのは、1kmTTで通常使用される「パシュートバー」ではなく、スプリントなどで使用される「ドロップバー」だったからだ。*

※「パシュートバー」「ドロップバー」の名称は、AUSCYCLINGのリリースを引用。

「パシュートバー」「ドロップバー」とは?

2つのハンドルバーには主に、以下のようなメリット・デメリットがある。

メリット デメリット
パシュートバー ・体勢がコンパクトになる
・空気抵抗を低減できる
・中長距離の高速巡行に有利
・瞬発力を発揮しづらい
・操縦するのが比較的難しい
・瞬時の駆け引きに対応しづらい
・短距離に不利
・流れが変わりやすい種目に不利
ドロップバー ・ハンドルが握りやすい
・全体重を掛け瞬発力を発揮しやすい
・瞬時の駆け引きに対応しやすい
・短距離に有利
・流れが変わりやすい種目に有利
・空気抵抗を比較的受けやすい
・中長距離での高速巡行に不利

パシュートバーは、肘から先の前腕をのせることができるハンドルバーのこと。

今村駿介, 男子個人パシュート, 2022全日本選手権トラック

パシュートバー

名前の通り、パシュート種目や中長距離のタイムトライアル種目に使用される。

空気抵抗を減らすことができ、高速を維持しやすいのが特徴だ。そんなパシュートバーを使用しないということは、1kmTTにおいて比較的不利。

深谷知広, 男子1kmTT, 2022全日本選手権トラック

ドロップバー

他国の選手はパシュートバーを使用するなか、オーストラリア自転車競技連盟が自国の選手にドロップバーを使用させることを発表したのはなんとレース当日。

しかし、急な決定や不利とされるセッティングのもとで出走したマシュー・グレーツァーは、59秒台の好タイムで見事大会チャンピオンに輝いた。

この結果にマシュー・グレーツァーは歓喜の涙を浮かべながら国旗を背負い、会場の声援に応えた。

さらに、1分切りまであとわずかに迫るタイムで銀メダルを獲得したトーマス・コーニッシュや、惜しくも4位入賞となったマシュー・リチャードソン(1:00.152)など、その他のオーストラリア選手もドロップバーを使用していた。

なぜドロップバーを使用?本人コメント

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