現実を見る、パリを見据える
Q:第2戦の順位や数字といった、具体的な目標はありますか?
「順位の目標は出さない」とジェイソン(・ニブレット ヘッドコーチ)とよく話しているんです。「ベスト8で良い」と思えばベスト8でホッとしちゃうと思うから、とにかく上へ、としか考えていません。
タイムでいうと、ハロンで10秒6台を出したいと思っています。欲を言えば10秒5が欲しいですけど、練習でもまだ出せていないので……現実的なラインでは10秒6が目標ですね。
Q:10秒5はこれから可能性のある数字、ということでしょうか。
全然あると思います!いろんな面でだいぶ力がついているし、ここからあり得るんじゃないかなと思うし、そもそもそれが出せないとパリオリンピックで戦うには厳しいので、出さなければいけない数字です。
パリオリンピックに「出る」はできるかもしれませんけど、パリオリンピックで「勝つ」ことを考えたら、もっと上のタイムを狙う必要があります。
Q:太田選手にとってレースってどんな感じですか?ワクワクするのか、戦いに行く!って感じなのか。
「戦いに行く」ですね。ウキウキでは全くないです。でも「ヤダ〜!」って感じでもないんですよ。練習するのがいっぱいいっぱいで、ここから抜け出したくて「早くレースしたい」って思う時もあります。けど、今はそういう状態でもない。
速く走れたら、「速く走る自分」を見るのは楽しいです。でも速く走れなければ楽しくないし……いろんな感情がありますね。
Q:楽しみな感じになれるように、ってことですよね。
そうなれば最高です。
Q:では最後に、決め台詞的な意気込みというか、ファンの方に向けた意気込みをいただきたいのですが。
……それ、難しいんですよね。前はスラスラ言ってたんですけど。
Q:何で難しくなっちゃったんですか?
すごく現実を見ちゃっているからだと思います。簡単に「金メダルに向けて頑張ります」などは、もう言いたくない。自分の発言と、自分が感じていることの間にギャップを作りたくないと思うんです。
東京2020オリンピックを目指していた時は、始めたばかりだったり、期待されていることもあって、自分じゃ「無理だろうな」と思っていることも口に出さなければいけない雰囲気があったと思うんです。でもそれが世の中に出ていくにつれて、自分の感じていることとのギャップがしんどくなってきて。
だから正直に、一つ一つのレースを大事に走って勝ち上がりたいと思っているのが今の私です。
自分の力がついている実感はすごくあります。
後悔しないように、自分で自分にがっかりしないように、全力で頑張ります。