急激な成長を遂げたエンリク・マス

チーム力の高さを見せたアスタナに対し、逆にチームからの助けを得られない中で、単独で見事な立ち回りを見せたのがエンリク・マスだった。

ゴールまで残り17km。逃げるキンタナとロペスを追う形で集団からアタックしたサイモン・イェーツに対し、マスは唯一喰らいつく走りを見せる。第17ステージでも、終盤にアタックしたアレハンドロ・バルベルデ(スペイン/モビスター チーム)に唯一ついていくことができていた。マスの重要なポイントで踏ん張れる実力と、仕掛け所を逃さない勝負勘の鋭さは冴え渡っていた。

そして、第20ステージの最後の登りで、サイモン・イェーツを突き放したロペスにもしっかりついていった。ラスト100mで先に仕掛け、ゴール直前の右カーブではきっちりとインを押さえ、ロペスに勝負をさせなかった。

ただ強いだけでなく、完璧なタイミングと戦術で掴んだ、クレバーな勝利だった。

ブエルタ・ア・エスパーニャ2018第20ステージを制したエンリク・マス(右)

そして、マスが2回目のグランツールで総合2位という快挙を成し遂げた大きな要因には、第16ステージの個人タイムトライアル(TT)が影響している。

この日、全体の中での6位という好成績を収めた彼は、ロペスとの間に1分16秒ものタイムを稼ぎ出すことに成功した。

最終的に、総合3位ロペスとのタイム差はわずか18秒。この日の個人TTの成功がなければ、マスが総合2位の表彰台に立つことは不可能だったのだ。

実力、勝負勘、そして個人TT能力、グランツールライダーとして必要な力を全てこのブエルタの中で走りながら身に着けていったマス。あとは、チームの助けさえ十分なものであれば、彼が総合優勝を手に入れる日も、そう遠くはないのかもしれない。

大失速してしまったバルベルデ