競輪選手からパラサイクリストへ

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寝そべり手で漕ぐ「ハンドサイクル」

Q:ハンドサイクルを始めた際、「自転車を漕いでいる」という実感はありましたか?

はい。ペダリングを行うのは手ですが、脚でのペダリングと良く似ています。綺麗に回すこと、力を効率的に伝達することが重要です。「チェーンが波撃たないように漕ぎ、全体にトルクを伝えることを意識する」みたいなところが競輪と良く似ていました。

ですが、走る時間は競輪よりも圧倒的に長いです(笑)。個人タイムトライアル種目なら10km〜20kmぐらい、ロードレース種目になると50km〜80kmを走ります。急勾配や下り坂などのアップダウンも、もちろんあります。日本サイクルスポーツセンター(伊豆)で行われた全日本選手権(2023)のコースは1周5kmほどでしたが、アップダウンが激しくかなりキツかったです。

Q:ペダリング以外に、競輪選手の経験が役立ったことはありましたか?

脇本雄太, 古性優作, 新田祐大, 全日本選抜競輪(G1), 高知競輪場

空気抵抗の感覚は、競輪で培った経験が役に立っています。選手の後ろに付くことで、ペダリングは半分ぐらいの力で済みます。先行して相手をちぎるぐらいの能力があれば別ですが、「力を温存して自分の得意な位置から仕掛けを狙う」というのは、競輪に通ずるものがあると思います。ですが自分はスタート力がまだ未熟で速い選手の後ろに付くことができないことがあるので、1つの課題として取り組んでいます。

不可欠な練習パートナー

Q:普段はどのようなトレーニングをしていますか?

モーターバイクで先導してくださる方や、ロードレーサーの練習パートナーの方々と公道でトレーニングをすることが多いです。

Q:ロードレーサーの練習パートナーと練習することで得られるメリットはありますか?

トレイン(隊列)を組む練習にもなりますが、1番はやはり安全面のメリットが大きいです。

寝そべった状態で自転車に乗るので、低すぎて周りの人から見えないんです。特にガードレールがあると私の自転車は隠れてしまうので、交差点などではクルマから全く見えなくなってしまいます。

ロードレーサーの練習パートナーと一緒に走ることで、クルマからの視認性が高められたり、安全に交差点を渡るタイミングを教えていただくことが可能です。安全性が高まることで練習の質も向上します。逆に練習パートナーなしでは、しっかりトレーニングを行うことができません。

Q:練習パートナーの方とはどのように知り合ったのでしょうか?

洞ノ上さんと一緒に車椅子マラソンをしていた頃から、練習パートナーとして一緒にトレーニングしていた方々です。交流期間が長いこともあり、ご本人の娘さんとも一緒にトレーニングしたり、一緒にレースに出場したりしています。

Q:田中選手にとっての初めてのUCI国際大会は?

2022年に開催されたカナダでのワールドカップが初めてのUCI国際大会で、野口さんが「出場してみては?」と声を掛けてくださったのがきっかけです。野口さんが個人出場の件について日本パラサイクリング強化指定のヘッドコーチに打診してくださり、出場できることになりました。

お2人(元競輪選手の野口・案浦)と再会したアメリカ大会は、2度目のUCI国際大会(ワールドカップ)でした。

インタビュー後編では10年ぶりに再会した「福岡の競輪トリオ」に、ワールドカップ出場への道のりを伺っていく。

【後編】「元競輪選手」3人がアメリカで再会!共に挑んだ『UCIパラサイクリングワールドカップ』/田中祥隆、野口一成、案浦攻インタビュー