IOC(国際オリンピック委員会)による「ウクライナ情勢をめぐる措置」の発表(2023年1月25日)を受け、UCIも2023年2月3日に公式声明を発表。
本声明にはIOCの決定を支持する意向とともに、UCIが懸念する点などが記述されていた。
公式発表までの経緯
2023年2月3日〜5日にオランダ・ホーヘルハイデにて開催されていた『2023シクロクロス世界選手権』。本開催に伴いUCI理事会は2月2日〜3日に集会を実施。本集会の最終日にて、IOCによる声明(2023年1月25日)を受けての独自の公式発表に至った。
これまでの措置と今後の決定事項
UCIはウクライナへのロシアによる侵略行為に対し、その発生時から強く非難し続けてきた。
2022年3月よりウクライナのサイクリングコミュニティに対してワールドサイクリングセンター(WCC)へ招待し、技術・機材面でのサポートを行ない、600,000スイス・フランがその資金に充てきた流れがある。
今回の声明では「第11回オリンピックサミット(2022年12月9月)」「IOC理事会(2023年1月25日)」による決定やその決定に至った経緯を踏まえた上で、以下の通りUCIによる独自の決定事項を発表した。
UCIの立場について
◯ロシア政府によるウクライナへの侵略行為を非難し、国際法に基づいた紛争の早急な解決を呼びかける。またこれを継続していく。
◯2023年1月25日にIOC理事会が発表した決定を支持する。
◯これまで通り、ウクライナ選手への支援を継続していく。
◯政治的中立性を継続していく。
◯あらゆる選手が自身の国籍によって差別されることないよう、全選手の権利を強調していく。
ロシア・ベラルーシ選手・職員の参加について
◯第11回オリンピックサミットおよび1月25日のIOC理事会による以下の決定を特に支持する。
「ロシア・ベラルーシの選手・職員による参加は、当該者のスポーツ活動におけるメリットと、スポーツのルールに対する敬意のみを鑑み考慮されるべきである。従ってロシア・ベラルーシの選手・職員によるUCI国際大会への参加機会は厳しい条件のもとで設けていく」
ただし以上の『参加機会』については、IOC理事会による新たな決定により設けられるものとする。
◯選手の参加機会は以下のような条件のもとに想定される。
・それぞれの主義主張、団体を代表することなく、中立的な立場を取らなければならない。
・オリンピック憲章を遵守しなければならない。特に、ウクライナにおける戦争行為に対し、積極的な賛同・支援を行うなど、IOCのピースミッションに背く行為を行なってはならない。また、アンチドーピング規定とそれに付随するルールや規定を遵守しなければならない。
◯「ロシア・ベラルーシの選手による参加」については、IOC理事会による新たな決定がない限り、以下のような2022年3月1日におけるUCI理事会の決定事項が引き続き有効となる。
・UCIカレンダーにおけるロシア・ベラルーシ国内での大会の開催、またその申請を禁止する。
・ロシア・ベラルーシの国内選手権は、UCIカレンダーから除外する。
・ロシア・ベラルーシによるUCI大会の開催、またその申請を禁止する。
・ロシア・ベラルーシに関連したエンブレム・名称・略称・旗・歌などの使用を、UCIカレンダーに登録された全ての大会で禁止する。従って、当2カ国の国内チャンピオンジャージの使用も禁止する。
・2022年3月1日時点でロシアもしくはベラルーシの国籍を持つ選手のうち、その他の国との多国籍を所有する場合は、競技国籍の変更を申請することが可能。
UCIによる呼びかけについて
◯以下のことについて改めて呼びかけを行う。
「UCIカレンダーの大会はUCIに加盟する各国内自転車競技連盟の全選手にとって開かれたものである一方、大陸選手権においては各大陸自転車競技連合/連盟に加盟する国内自転車競技連盟の選手のみ出場できる」
◯各国政府に以下について呼びかけていく。
・オリンピック・ムーブメントの主体性に対する理解
・オリンピック・ムーブメントの政治的中立性とその立場に対する理解
・国籍によって出場選手を制限してはならないこと
◯各国政府に以下について呼びかけていく。
・オリンピックおよびUCIの国際大会を政治的制裁の手段として利用しないこと。
・「平和な社会、差別の撤廃、相互理解、友情、連帯、フェアプレーの精神、政治的中立性や自律性」など、オリンピック憲章における『オリンピズムの根本原則』への理解。
2022年3月1日におけるUCI理事会の決定事項については以下記事を参照