東京2020オリンピック マウンテンバイククロスカントリー種目に、日本代表選手として出場した山本幸平選手。世界を舞台に戦ってきた山本選手にとって、自身で発してきたように、東京2020オリンピックが最後のオリンピックの舞台での公式レースとなった。
長きにわたり日本のトップを走り続けた山本選手に、レースの振り返りと今後の展望について伺った。
山本幸平プロフィール
北海道幕別町出身、DreemSeeker MTB Racing Team所属。北京オリンピックより日本代表選手に選抜されており、東京開催では自身4回目のオリンピック出場となった。
「自分らしい走りができた」
Q:東京2020オリンピックお疲れさまでした。ご自身の走りを振り返ってみて、いかがでしたか?
「達成感を持ってゴールできたことが何よりもよかった」と心の底から感じています。
しかし、目標としていた8位入賞には届かなかったことは力不足でした。若手たちの育成環境や業界全体への影響を考えると、成績を残したかったです。
Q:事前のインタビューでは「自分に勝ちたい」、「出し切りたい」とおっしゃっていましたが、達成できましたか?
納得いく走りができましたし、達成感はあります。しかし正直な気持ちとしては、「出し切った」とは言えないですね。
Q:それはなぜでしょうか。
やれることをやって臨んだレースだったことは確かです。誰も経験したことのない状況の中でベストは尽くせたとは思いますが、1年延期されたことで苦しい部分もありました。一度、気持ちが切れかかったことも影響しています。
Q:心が揺らぐ瞬間もあったと思いますが、スタートラインに立ったときはどんな心境でしたか?
緊張すると思っていましたが、“アスリートとして最も輝くべき最後のレースにしよう”と心が決まっていたからか、穏やかな気持ちでした。
「しっかりと自分を表現しよう」と、落ちついた晴れやかな心持ちでした。
Q:「山本幸平らしい走り」は表現できていたのではないでしょうか。ゴール後の表情が印象的でした。
スタートからゴールまで、僕の耳には観客からの“幸平コール”が届いていました。
今まで自分を応援してくれた方たちへの感謝の気持ちと、目標の8位入賞が叶わなかった悔しさが入り混じった心境でしたが、「見守ってくれてありがとう」という想いが笑顔に繋がりました。
Q:ご家族の反応はどうでしたか?
「幸平自身が良い表情でゴールしてくれたことが一番嬉しいよ」と言ってくれましたね。
これまでの道のりにおいて、家族の支えは本当に大きかったので感謝の気持ちでいっぱいです。
Q:東京2020オリンピックが、最後の国際大会の公式レースと言っていいんでしょうか?
「世界トップ10を目指す競技者」としては事実上の引退レースでした。今後は、マウンテンバイクの楽しみ方を極めるかもしれないし、勝敗は気にせずともレースに出場を続けるかもしれない。
これからどんなふうにマウンテンバイクと向き合っていくのか、僕自身も変化を楽しみにしています。