競技人生を左右した五輪での挫折
Q:パリの話が出たので聞きますが、パリオリンピックでは国内の期待がとても高かったと思います。
開催国だったこともあり、プレッシャーを感じすぎていたと思います。本来ならば東京オリンピックを経験して2回目のオリンピックとして慣れた状態で臨めたはずでした。
ただ、東京オリンピックはコロナの影響で形式や観戦ルールが異なるオリンピックだったこと、自分が若かったことも含めて、本当の意味でのオリンピックを経験できていなかったんだと思います。
パリオリンピックは母国催国だし「絶対に金メダルを取る!何の種目でもいいから金メダルを取るんだ!」と力を入れていました。自分自身で追い込み過ぎたせいで、結果として何も取れなかった時に、人生がシャットダウンされるような気持ちになり、 今後どうすればいいのかわからなくなってしまいました。
とても残念な気持ちになって、自分にとってもう1度奮い立つようなモチベーションや、競技が好きという感情が全く見つからなくなりました。パリの後は、もう自転車競技をやめようかなとも思っていましたね。本当に1年ほど続けるかどうしようか迷っていました。
時間をかけてさまざまなことを思い返すうちに、やっぱり私は自転車競技が好きだと。この自転車の世界で得られる1つ1つの瞬間を共有することも好きだし、その機会を持つこと自体もすごい好きだと気づけました。
自分を向上させたいし、他の選手たちにとっても良い影響になってくれればいい。そうなれば、再び幸せな気持ちになれる。だから続けてみようと。
トラック上で自分が持てるものを全て出せばいいんだ、と思い始めることができました。
さまざまなことがありましたが、自転車競技を本当に楽しみたいと思えるようになって、競技に戻ってこれました。競技を辞める日がいつかは来ると思いますが、もしその時に私に子供がいたり、自分と同じような境遇の人がいたら「私はやりきったよ」って言えるように競技を続けています。
ロサンゼルスオリンピックで金メダルを取れたら、すごく嬉しいですね。でも例え取れなかったとしても、それはそれで人生なんです。だから全力でやるし、他にも人生で大事なことはたくさんあると気づけたので、とにかく自分にできることをやろうと思います。
2027年にはまたフランスで世界選手権があります。そこで本当に楽しむために今を過ごしたいと思いますし、コンディションを整えて楽しく自転車に乗って、その上で勝てるようになりたいです。
Q:言葉では表せない大変な境遇だったと思います。どうやってメンタルの切り替えができたのでしょうか。アンドルーズ選手とのニュージーランドでのトレーニングを経たこともきっかけでしたか?
ニュージーランドに行ったことは大きなきっかけでした。ちょうどその時期に家族に少し不幸があり、人生はすごく早く過ぎていくんだなと。今この時間を大切にして楽しまないといけないと感じました。
自分にはメンタルコーチがいますし、自分だけでは思いつかない角度で物事を考えてみることもしています。最も大事なのは、自分がやっていることを好きでいることですね。ニュージーランドに行って、さまざまな人と話して…あの場に行けたことが、今の自分をとても大きく助けています。