先輩・村上義弘とKEIRINグランプリ2021

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強くなりたいのは「本能」

Q:去年、グランプリ2021で優勝してから、変化はありましたか?

何もないですね。気持ち的にも変わらないですし、私生活も変わらない。街中で声を掛けられることはちょっと増えたかな。タクシーの運転手さんに名前を言われることは増えました。

Q:スーパースターになりたい気持ちはありますか?

ないですね。あんまり目立ちたいとも思わないし、服とかも大して興味ないし……目立ちたいとは思わないけれど、強くなりたい欲求はあります。BMXをやっていた時もお金はなかったけど、強くなるために頑張っていました。そういう性格なのかもしれないです。

優勝したからといって生活水準が上がったわけでもないです。賞金も手で持って帰らず、全部振り込みにしてもらってます。お金にもそんなに興味がない方だと思いますね。これが欲しいとかもないです。

Q:先日BMXのジャパンカップに、プレゼンターとして来場したとも伺いました。

はい、行きました。BMXで2人くらいに「将来競輪選手になりたいです」って声をかけられましたね。両方、全然関係ない県でしたね。嬉しかったけど「千葉」とか言われて(笑)

BMXは正直稼ぐのが難しい。それをやり切った後に競輪選手になるっていう、そういう考え方もありなんじゃないかなと思います。

古性優作

Q:古性選手の込み上げる「強くなりたい」という欲求の根源はなんなのでしょうか?

”本能”ですかね。本当にBMXの時から変わらないです。BMXって優勝しても3万円くらいしか貰えない、それが年に何回かしかありません。そんなんじゃ生活できないけど、でも強くなりたい気持ちはありました。BMXで優勝したって有名になるわけでもないです。

そこで頑張れていた、そこで強くなるために必死に考えていた……その頃の感覚のままですね。

今は勝つとお金も貰えますが、そこに大きな興味はなくて。あんまり良い車に乗って「めっちゃええ車乗ってるやん!」とか言われるのも面倒だなって思っちゃうんですよね(笑)

Q:そう考えると、競輪って「ずっと強いこと」を求められる仕事ですから、すごく向いてる職業かもしれないですね。

そうですね、好きです。練習がストレス発散になっている部分もあります。

Q:古性選手には引退後のイメージってありますか?

それこそ自分が儲からなくても良いから、食堂とかをやって学生に腹一杯食べさせたいです(笑)50歳までは選手として頑張りたいと思ってますけどね。

「1番車の責任感」より重いもの

古性優作

Q:今は古性選手と脇本選手が近畿を背負っていて、去年のインタビューでは「責任感」という言葉も出ました。グランプリを獲って競輪界を代表する選手になったことで更なる「責任感」などは感じているんでしょうか?

グランプリを獲る前から、今まで村上さんたちが作り上げてきた近畿の中で走ることに、責任感をすごく感じていました。

「1番車の責任がすごい」とはよく言われていたのですが、いざ”それ”に袖を通してみると、僕は「近畿の責任感」の方が重圧があったな、と思います。結果を見ても言えることですけど、”1番車の責任”には押しつぶされなかったです。

Q:近畿の責任感というのは「先輩たちが積み上げてきたものを崩さないように」という責任感でしょうか?

最初ははとにかく近畿の先輩に認められるような選手になる、そのために攻め続けること、というのが「責任感」でした。でも次第に近畿の先輩が作り上げてきたものを崩さないような責任感、もまた出てきました。守っていくための責任感を、村上さんが抜けた今、より一層感じています。近畿の選手1人1人が自覚を持っていかなきゃと思っています。

Q:一方でゆるゆるな脇本選手もいますが。

あの人はもう「ワッキー」って感じですからね(笑)唯一無二ですね。

脇本雄太, 福井競輪場

自称「競輪界で一番ゆるい男」

Q:今はお2人がすごく強くて、それに続く若手が望まれるところですね。

寺崎(浩平)も強いですし、野原(雅也)も強いです。大阪にはこれから伸び代のある選手がいっぱい在籍しているので、どんどん出てきてもらって、一時期の京都くらいの人数が大阪から出てきてくれると嬉しいですね。そうして近畿全体として、関東のように活きの良い選手が増えてくれたら嬉しいと思います。

本当に気持ちの強い選手がいっぱい出てきてくれたら、それが一番嬉しいです。速い選手じゃなくて強い選手がいっぱい出てきてくれたら。

「明確な目標」となったグランドスラム

新田祐大, 表彰式, 寬仁親王牌, 前橋競輪場

グランドスラムを達成した新田祐大

Q:今の古性選手はグランプリも獲り、G1も3つ獲り、目標というとどこになるのでしょう?

今はやはり、グランドスラムですね。最初はグランドスラムは漠然とした目標でしたけど、今は「目指してみたい」という気持ちになってきました。

Q:競輪学校(現:競輪選手養成所)時代から「グランドスラムが目標」とお話しされていました。

はい。先日の寬仁親王牌で実際に達成するところを目の前で見て「やっぱり良いな」と思いました。

Q:選手目線で見るグランドスラムとは、どういうものなんでしょう?

年々難しくなっているとは思います。G1の開催日数も長くなっていますし。その中で獲るというのは、やはり凄いことだと感じます。

自分ももちろんグランドスラムが欲しいですけれど、狙って獲れるものでもありません。「残り1個」とかになったらまた気持ちも変わるでしょうけど、今はまだまだたくさんある状況です。具体的に「このG1タイトルを狙いにいく」と言えるほどの実力があればいいですけど、そこまででもない。展開に恵まれて勝っているような状態です。だから1戦1戦がんばって、いつか獲れたらいいかな、という感じです。

Q:では最後に、KEIRINグランプリでどんなレースをしたいかを聞かせてください。

とにかく脇本さんと一緒に、お客さんが興奮するレースができたらと思います。頑張ります。

KEIRINグランプリ2022インタビュー
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