中長距離チーム、第一章の集結

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努力が裏づけする強さ

梶原悠未

2020年世界選手権、女子オムニアムに勝ったとき、ドイツ・ベルリンのベロドロームで梶原悠未が目に焼き付けた光景はまだ記憶に新しいはずだ。

新型コロナウイルスが猛威を奮い続ける今、東京オリンピックでは数少ない、有観客で行われる競技であるトラック競技。観客数も平常時よりはかなり少なくなるだろう。だが、競技人生の内にもう二度とないかもしれない母国開催でのオリンピックで勝ったならば、それは何にも代え難い記憶となるはずだ。

そして梶原はそれを実現する可能性を持つ。

Point Race / Women's Omnium / 2020 Track Cycling World Championships, Kajihara Yumi 梶原悠未

梶原は1歳から水泳を始め、幼少期から競泳でコンマ数秒を争ってきた。中学で全国大会に行くための記録を、万全だったが破れず、全国を逃した。

「ずっと(タイムを)切れる努力もしてたのに、準備もしていたのにタイムが切れなかったのは、何か神様からもっと他のスポーツに挑戦してみたらどう?っていうメッセージをもらっているのかもしれないね」

一緒に悔し涙を流してくれた母からの言葉に、他の競技への可能性を模索し始めた。高校から自転車競技を始めた梶原は、最初は苦戦しながらも、どんどん自転車競技の楽しさに魅了されていった。

Point Race / Women's Omnium / 2020 Track Cycling World Championships, Kajihara Yumi 梶原悠未, Letizia Paternoster レティシア・パテルノステル

梶原の強さは、全て努力に裏付けされていると言っていいはずだ。圧倒的なほどの負けず嫌いの性格は、あらゆる準備に一切の妥協を許さない。梶原は「質と強度の高いトレーニングをどうしたら実現できるか」それを常に考えて行ってきている。

クレイグヘッドコーチは梶原について「最大のポイントはスピード。それとともに、ここまでのトレーニングで回復力と、レースに勝つ戦略を立てられるようになった」と話した。しかし、スピードに関しても自身が課題として持ち、じっくり時間をかけて作り上げてきた賜物なのだ。

Elimination / Women's Omnium / 2020 Track Cycling World Championships, Kajihara Yumi 梶原悠未, Kirsten Wild キルステン・ウィルト, Letizia Paternoster レティシア・パテルノステル, Jolien D'hoole ジョリエン・ドホール

オムニアムの中で得意とするエリミネーションも、もともとは順位を落としてしまう、苦手としていた種目だった。しかし筑波大学での卒業研究として、強豪選手たちの動きを徹底的に解析するうちに、克服し切った。

「目標に向かって努力し続ける」習慣は、幼少期から変わらない。常に課題を、目標を持ち、アップデートをしながらさらに上へと突き進む。

「オリンピックでの金メダル」は、梶原が母とともに二人三脚で見続けた長年の夢。

実現のときまで、あとわずかだ。

ベースアップに費やした1年

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