自転車トラック競技日本ナショナルチームを支え、かつ次世代選手の育成にも力を入れるために日本自転車競技連盟が立ち上げたHPCJC(High Performance Center of Japan Cycling、以下「HPCJC」)。コーチ、メカニック、メディカル、トレーナー、科学分析班といった様々なスタッフが揃っている。選手を多角的な視点から分析し、支え、さらなる高みへと引き上げるためのプロフェッショナル集団だ。

今記事では2020年から新たに着任したストレングス&コンディショニングコーチについて紹介する。

「ストレングス&コンディショニングコーチ」……あまり聞きなれないこの職を担うのは、ファブリース・ヴェットレッティ氏。選手育成の鍵を握るヴェットレッティ氏の仕事へ迫る。

ストレングス&コンディショニングコーチとは

Q:まずストレングス&コンディショニングコーチ(以下S&Cコーチと記載)とは何か?を教えて下さい。

S&Cコーチは主にスポーツパフォーマンスを向上させる役割です。競争力のある選手を対象に、特定のスポーツでのパフォーマンスを向上させます。スポーツ毎の身体的要求へ合わせ、有酸素・ジム・柔軟などのトレーニングプランを作成します。

例えば有酸素のトレーニングなら、各運動の種類・持続時間などを決めます。ジムトレーニングでは、運動の種類・総セッション量・休息期間・頻度・強度を決定します。ここまでが基本的なS&Cの内容です。

Q:「基本的」ということは、ファブリースさんの仕事は少し異なるのでしょうか?

私はHPCJC内で短距離、中長距離、どちらも担当しています。短距離のブノワ(ベトゥ)ヘッドコーチジェイソン(ニブレット)コーチ、中長距離のクレイグ(グリフィン)ヘッドコーチへ「選手情報を供給する」役割とも言えます。

自分が持つ選手情報を共有することで、コーチ陣3人が選手へどの様なトレーニングを行わせるのか、それを決める手助けをします。そして選手たちを3人のコーチたちとは異なる視点で見て、練習の質を上げることが仕事です。そのためには身体的にも精神的にも選手を知らなければいけませんので、様々なテストを行っています。

HPCJCに所属するアスリートたちはとてもレベルが高く、それぞれが肉体的に異なる特性を持ちます。同じ練習で全員が強くなれるわけではなく、選手たちそれぞれの能力を高めるためのトレーニングが必要となります。そのためには、アスリートの身体や思考を知らなければなりません。それらを知るのは時間が掛かりますが、個々のアスリートを理解することで、我々への信頼に繋がります。アスリートたちの限界を引き出し、そして限界を超えていけるようになります。

スポーツに精通し、自転車競技を理解しているS&Cの人材をHPCJCは探していました。そしてその人材には「あくまでコーチ達を支える仕事であり、主役にはならない」ということも求められました。全てはアスリートのためであり、そのためにコーチを支えることが出来る人材が必要とされていましたね。

公式戦で結果が出るかどうか

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