自転車トラック競技日本ナショナルチームを支え、かつ次世代選手の育成にも力を入れるために日本自転車競技連盟が立ち上げたHPCJC(High Performance Center of Japan Cycling、以下「HPCJC」)にはコーチ、メカニック、メディカル、トレーナー、科学分析班といった様々なスタッフが揃っている。選手を多角的な視点から分析し、支え、さらなる高みへと引き上げるためのプロフェッショナル集団だ。

そんなチームの中で、チーム専門のメディカルスタッフとして活躍するマッサー(ボディーケアを専門とする人)の中山真臣(なかやま・まさおみ)氏と、理学療法士の井上純爾(いのうえ・じゅんじ)氏にインタビューを行った。2人の仕事や、選手たちを支えるメディカルの体制、2人だからこそ知るチームの裏側とは?「縁の下の力持ち」たちの語る、知られざる世界をお伝えします。

自転車専門の医療スタッフとは?

Q:お仕事の内容についてお聞きしていきます。自転車専門の医療スタッフということで、どのような点が他とは違い、どのような点に気をつけているのでしょうか?

理学療法士 井上純爾(いのうえ・じゅんじ)氏

井上:これまで他の競技のプロアスリートも数多く診てきましたが、「固定観念を持ち込まない」ということを心がけています。例えば陸上競技だと足を地面につけるので、地面からの衝撃がありますよね。でも自転車はペダルの回転なので反力を受けづらい。足だけで考えても、足にかかるストレスや力学的なものが違います。なので「まったく別物。とはいえ、同じ人間の体」ということを念頭に入れるようにしています。他の競技の治療で得た「こういう場合は、この治療」のような知識を持ち込みすぎないようにしています。

マッサー 中山真臣(なかやま・まさおみ)氏

中山:僕の場合、他競技のプロの治療経験がある井上さんと違って、学生がメインの治療院や競輪場での治療などが前歴です。ですから今の立場も以前からの延長という感覚でいます。「自転車だから」というのは、僕もあまり考えてはいません。

井上:僕は自転車選手を相手にするのはほぼ未経験でしたので、なおさらこういう考え方なのだと思います。サッカーや野球だと、先人の治療家が多いので論文や本も多いです。でも自転車、特に日本国内だとそのような資料がまだまだ少ない。だからこれから中山さんが、礎を作っていってくれるんじゃないかと期待しています(笑)

中山:いや、井上さん、もう書いてるじゃないですか(笑)

井上:そうでした(笑)尊敬する大先生に言われて2本くらい書いてます。論文というか、「臨床スポーツ医学」という医学雑誌への寄稿なんですけど・・・

中山:新しいのも書いていますよね?

井上:力作ですよ。トラック競技だけでなく、自転車競技全般に通ずる内容です。

※注:「臨床スポーツ医学」第37巻/第10号(2020年10月)に「自転車競技におけるスポーツ外傷・障害予防とパフォーマンスの向上の両立」という論文が掲載されました※

専属スタッフだからこその「気づき」

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