本当に勝利を思い描けていたか
実際に新田のレースは敗者復活戦、続く2回戦ともに他を寄せ付けない強さで、1着で勝ち進んだ。レース詳細は関連記事を見ていただくとして、新田の最終結果は12位。日本が最重要種目として考えているケイリンで、新田の実力を考えれば不本意な結果となった。
関連記事:新田祐大、人生最後の世界選手権ケイリン/2020世界選手権トラック・ドイツ
「結果としては良くなかったですし、負けているので、どこかに自分の弱さが出てしまったと思います。準決勝はそういうレースになってしまいました」
「梶原(悠未・女子オムニアム金)や脇本(雄太・男子ケイリン銀)みたいにメダルを獲った人のレースを見て感じたのは、自分はこの1年間、本当に勝利を想い続けていたのか?と。昨年の世界選手権で2位になってから、世界1を目指したこの1年間で『自分の成績や体力を過信している部分があったのではないか』と自問自答しました」
最終種目、自分は何をすべきか
新田にとって人生最後の世界選手権。その大トリを飾るスプリントが大会4日目に行われた。
予選では深谷が持つ日本記録を更新、自身最高、チーム内でも最高である5位の成績を残した。今大会、新田の出場種目で最も印象を残したのがスプリントだろう。自らの可能性を信じ、オリンピック出場への道を切り開くために挑んだ最終種目であった。
「ケイリンから中1日あったので、その1日で様々なことを考えていました。チームスプリントの責任とか、悔しい想いをした人たちの想いを少しでも結果に繋げられるために、自分は何をすべきなのか・・・そういうことを1日中ずーーーっと考えていました。
チームスプリントが終わってから、スプリントまでの3日間、実は朝起きる度に『夢だったら良いのに』と思っていたんです。
スプリント当日になってようやく『やることは1つしかない。ここで悩んでいても仕方がない。終わった時に悔しかったと思わない様に。結果が良くても悪くても、満足出来たと言えるように走りきる』という気持ちで臨めたと思います。自己ベストで予選も通過出来たし、今まで世界選手権でスプリントを走ったことはあまりないのですが、初めてベスト8に残ったので、僕の中では頑張ったなと思えました」
新田の手元へメダルは残らなかったが、現在の自分をスプリントでは全て出し切った。
「もちろん100%満足かと言ったら満足ではないです。ここへ来るまでに追い込めたのか、練習で甘い部分があったのではないかと改めて思い返す部分もありました。でも今持っている力は出し切っての戦いだったので、これが自分の今のベストだし、これ以上を求めても出てこないと思います」
東京オリンピックの代表選考へ向け、全てが終わった。残ったカードは「出られるか・出られないか」の2枚。新田へどちらのカードが配られるのか。