頭から離れない、敗北
いつも通りのフランクな態度で話に応じてくれるドミトリエフだが、この言葉の裏には後悔しても仕切れない、過去の過ちがある。
「2017年に世界チャンピオンになったけど、その次の年はモチベーションが続かなかった。いや、モチベーションは高かったけど、どこかで気が抜けていたと思う。自分で思い返しても2018年の世界選手権のスプリントに挑むには準備が足りていなかったと感じるよ。そして負けた。その負けが頭から離れないんだ・・・・・・」
2018年の世界選手権、2連覇を目指したドミトリエフは準々決勝でマシュー・グレーツァーへストレートで敗北した。
誰よりも強く「勝ちたい」と望むこと
いつまでも記憶に残る敗北、そして後悔。この男は数多の敗北を重ねて強くなってきた。そして世界タイトルを失ったことすら、自分の糧にしようとしている
「本当に欲しい物を得るためには何かを犠牲にしないといけない。毎日どれだけ自分の目標を達成したいのか、自分自身に言い聞かせているよ。
スプリントをやっている選手は世の中に何人いると思う?何千人といる。その中でチャンピオンは1人だけ。僕はチャンピオンになれる人は、他の選手よりも“勝ちたい”想いが強い人だと思っているんだ。本当に誰よりも強く望まなければいけないと思う」
人生の最後に後悔をしたくないから
練習の時には孤独だったり、辛いと思うことはたくさんある。でも練習のあと、僕は自分自身にこう問うんだ「デニス、本当に全て出し切って練習できたか?」って。
僕らスプリンターの練習は、足に激痛を伴う。それで諦めて、練習をストップしてしまうことは簡単。でもそこで止めたら勝てないし、チャンピオンにはなれない。だから「どれほど強く目標を達成する気持ちを持てるか」が大事だと思っているよ。
もちろん僕だって遊びに行きたいし、家族と過ごしたいし、やりたいことはたくさんある。でもそれら全てを我慢して金メダルを獲る力に変えなければ、チャンピオンにはなれないんだ。それでも勝てないことはあるけどね(笑)
でもそこまで自分を追い込んで、全部を出し切れたら、勝っても負けても後悔はしないと思う。人生の最後に「あの時こうしていれば」って後悔だけは絶対したくないからね。