絶対に勝たなければならない

最強を極めた者にしかわからないプレッシャーが存在するという。レースに参加していた頃はそんなことは微塵も感じさせなかった。レース会場での取材時も、常に明るく声をかけてくれ、陽気な素振りさえ見せていた。でも本当は辛かった、逃げ出したかったのだ。だが彼女は逃げる道を選ばず、真っ直ぐにプレッシャーと向き合うことを選んだ。

「私が出場すると“絶対にクリスティーナが勝つよ”とか皆に言われるんです。それが普通でした。いつも勝っていると、周りからは簡単に勝てるように見えるのでしょう。でも、どのレースも簡単なレースなんてありません。もちろんレース自体が厳しいことも沢山ありますが、それに増して厳しいレースになるんです。自分は勝者でいなくてはならない。絶対に勝たなければならないプレッシャーがあります。

家族や近い友達はプレッシャーを与えてきたりしませんでしたが、私はいつもレースで遠くにいるので、せめてレースで勝って彼らに何か持ち帰りたい。せめて自分を誇れるような証を持って帰りたいなどと考えていました・・・・・馬鹿げていますよね。

自転車連盟にしてもそうです。私が勝ち続けて国内のトラック競技の人気は上がりました。連盟にはスポンサーが集まり、チームの雰囲気も良くなって、他の選手も伸び伸びとレースに参加することができていました」

上へ登れば登るほど孤独になる。頂点に立てる者はたった一人だ。気づけば、とても孤独な領域に立っていた。それは長年一緒に過ごしてきたパートナーに対しても同じだった

「マイケル(フォーゲルのボーイフレンド)にはあまり話せませんでした。彼はいつも私のそばに居てくれる人だったんですが、彼にとって私が誇れる存在でいたいと思っていました。戦術やトレーニングのことなどは話ましたが、プレッシャーに関しては話しませんでした。でもね、私がプレッシャーに晒されている時、わかってくれているんですね。2人は上手くやってこれたと思っています」

ようやく息ができる