負け知らずのスーパースター
クリスティーナ・フォーゲル。1990年生まれのドイツ人、自転車トラック競技のスーパースターだ。世界選手権での金メダルは計11個、オリンピックでも金メダル2つ、銅メダル1つを得ている。
彼女がどれ程強い選手かと言うと、国際大会の表彰式では何度もドイツ国歌が流れ、フォーゲルの首には金色のメダルが輝いている光景を何度も見た。フォーゲルに勝てる選手はいるのか?と思わされる程、最強の選手だ。日本人にわかりやすく言えば、レスリングの吉田沙保里みたいな人物である。
2016年からほぼ負け知らずのスーパースターの人生は2018年6月に大きく変わった。
練習中の事故により半身不随となり“負け知らずのスーパースター”のまま、レースの舞台から身を引くことととなった。
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「あのフォーゲルが本当に引退するのか?」
インターネットやヨーロッパのメディアを通じ、フォーゲルの車椅子姿を目にしていた筆者だが、信じ切る事ができなかった。いや、信じたくなかったのかも知れない。
真実を確かめるべく、ドイツ・ベルリンに居るフォーゲルの元を尋ねた。訪れたMore CADENCEの取材陣の前に現れたフォーゲルは、以前と変わらない優しく快活な笑顔を見せてくれた。しかしその口調は明らかに、事故前と異なる落ち着いたものであった。