引退の実感はゴールした瞬間
20年間も続けてきた自転車競技を引退する実感はいつ抱いたか?その問へ対しては「やっぱり、決勝でゴールした瞬間」と振り返る。
前田佳代乃の引退試合となったのは、2018全日本選手権の女子スプリント決勝。事前に引退を公表していなかったにも関わらず、それは最終日の最終レース、さらには勝負が3本目へもつれ込むという、全てに脚本があったのではないか?と思う程にドラマチックな舞台であった。
対戦相手は太田りゆ。ナショナルチームへ彗星のように現れ、一足飛びにトップ選手への階段を駆け登った、若手の有望選手。レース直後のインタビューでは「りゆは、選手としてのタイプが自分に似ている」とも語り、自分が先輩たちから受け継いできたバトンを渡す相手としてふさわしいと認めた相手の1人だ。
実は我々は前日に、前田佳代乃が全日本選手権を最後に引退表明する事を知らされていた。太田りゆは前田佳代乃から「引退だから勝たせようとか、手を抜くなよって言われました」と言っていた。前田佳代乃は自らがバトンを渡す相手として選んだうちの1人、太田りゆへレースを通してバトンを渡そうと決めていたのだ。