2024トラックネーションズカップ第1戦オーストラリア・アデレード大会最終日となる2月4日に実施された男子スプリント。37人の強豪たちの頂点に立ったのは、日本の太田海也だった。
自身初の金メダル獲得。そして世界トップの1人、マシュー・リチャードソンを倒して得たネーションズカップの頂点。しかしその代償は大きかった。
決勝終了後には太田と対戦相手のマシュー・リチャードソンが倒れ込むほどの死闘。
その時、太田が考えていたこととはなんだったのか?
ネーションズカップ第2戦を前に、改めて”ネーションズカップならでは”のスプリントの過酷さについて、太田選手の言葉を借りる。
3本目までもつれ込んだスプリント決勝
Q:ネーションズカップ第1戦ではオーストラリアのマシュー・リチャードソンと死闘を繰り広げました。3本目までもつれ込んだスプリント、脚の「痛み」も相当のものだったと思いますが。
「もうやりたくない」って何回も思うんですけど……ネーションズカップはタイムテーブルが詰まってるからこそ、あのような勝負になるので……変な恐怖感があります。
Q:3本目はリチャードソンも、スタートに並んだ時点でグロッキーな状態に見えました。ご自身もしんどかったと思いますけど、その時はどのように考えてました?
2本目の時、リチャードソンの体調とか感じとかを見て「いける」という感覚があったんです。2本目と3本目の休憩時間は10分でしたが、8分の時点でスタート前の待機場所に向かいました。「準備できたよ?」って(笑)
結局リチャードソンは2、3分遅れて来ました。向こうは動けない状態で、さらにうまくプレッシャーをかけられたところが良かったのかなと思ってます。体力的・精神的に追い詰めることができたのが勝因でした。
「スプリント」じゃなくて「ネーションズカップスプリント」
Q:スケジュールがおかしいですよね。見てる側としては面白いですが(笑)
なぜこういうスケジュールにするのか全く理解できません!世界選手権でもオリンピックでも、あらゆる種目で過密なスケジュールにはならないんです。インターバル10分でやるなんて見たことないですよね(笑)?あれはもう「スプリント」じゃなくて「ネーションズカップスプリント」という種目です。
Q:好きですか?
好きです(笑)
やっぱりみんな苦しんでくれるから、そのぶん自分が有利になりますね。サバイバル感がある種目です。自分でもどうにかしてほしいとは思いますけれど(笑)
相手が誰でも「自分自信との戦い」
Q:次のネーションズカップ第2戦では、ハリー・ラブレイセン(オランダ)との対戦もあり得るでしょう。「絶対王者に挑む」ことになりますが、楽しみと怖さとでいうと?
自分の持つ力がアデレード(第1戦)から増えたかというと、そういうわけではありません。リチャードソンとの戦いでは、自分自身を信じられたことが結果につながりました。逆に、相手に惑わされると勝てません。
「その時の自分が、コーチやチームと一緒にやってきたことをどれだけ信じられるか」だと思います。だから怖さよりも、自分自信との戦いだなと思っています。
Q:ラブレイセンと戦うからどうだ、という話ではなく。
はい。強い相手で「答え合わせ」をできる、という感じです。
Q:現在の200mFTT自己ベストは?
9秒5の前半くらいです。
Q:香港のベロドロームでも自己ベストを狙いますよね?そうでないとベスト4(1回戦をスキップできる)に入れませんし。
そうですね。アデレードでは自分の満足のいくタイムを出すことができました。今すごくよい感覚を維持できていて、この感覚を香港でも……環境にも左右されるとは思うのですが、自分の課題を意識した上で日本新記録を目指したいと思います。
闘争心を持つことが課題
Q:まだネーションズカップで優勝していない、ケイリンについても聞かせてください。
これまで銅メダルは獲得していますが、「戦いきれていない」ところがあると思います。ケイリンには運の要素もある、と思っているからこそ自分としての闘争心を持つことが重要なんだと感じます。もっとオリンピックに向けて改善していける部分が、ケイリンに関しては(スプリントと比べて)よりありますね。
Q:ケイリンとスプリントだと、スプリントの方が楽しく感じます?
スプリントの方がプレッシャーがかかります。これまでの実績がある分、求められるものが大きいので。そういう意味でスプリントの方がゾクゾクしますね。
Q:スプリントの時、顔がヤバいですもんね(笑)
そうですか?やっぱりケイリンって難しくて、力を出せても勝てない時は勝てないですから。