秘密兵器「お母さん」
Q:実はジェイソンコーチに、「海也の自宅には今お母様が来ていて、ご飯を作ってくれているからあんなに強いんだ」と聞きました。
はい。親に人生2回目の頼み込みをして、僕の家に来てもらっています。
人生1回目は「競輪選手にならせてください」という頼み込みで、2回目が今回の「静岡に来てご飯を作ってください」という頼み込みでした(笑)
これまでバランスを考えながらも外食になることが多かったんです。でも家で食べる食事はリラックスもできますし、栄養面でもベストです。
だけど自分ではご飯が作れず、他人の手も借りることができないので身内に頼み込むしかない。姉ちゃんも違うし、母親しかいないと思って「お願い!オリンピックに出るために、家族みんなで頑張ろう」と説得しました(笑)
Q:お母様は快諾してくれましたか?
母親はもともと料理が好きなタイプで、父親も含めて家族揃って僕を応援してくれているので、喜んでくれました。2022年の12月ごろから相談していて、3月ごろにわざわざ仕事も辞めてまで来てもらいました。
「食事が改善できれば、無敵になれるから。無敵になるために来てください」と言ってお願いしました。
こちらに来たのは母だけで、実家には父親と弟がいるんですが、母親の料理が食べれないので今苦情がきています(笑)
Q:お母様の料理が気になりますね。
インスタグラムに投稿しているので、是非見てください!
Q:「23歳にもなって……」など言われたりしますか?
ヤバいぐらい言われます(笑)
でもそこでレースと同じく、相手に主導権を握られてはダメだと思ったので、「息子がオリンピックに出たら嬉しくない?家族みんなで出るのがオリンピックだから」と言いくるめて、主導権を握り返します(笑)
Q:家族一丸でオリンピック一直線ですね(笑)。
そうですね。もともとそこ(オリンピック)に向けて動いているので。
「ドラミング海也」の始まりは?
Q:太田選手の原動力はどういったところにあるのでしょうか。
何にでもそうなのですが、一度決めたことをやり切るまでずっとやるタイプなので、「オリンピックに出たい」と思ったら出るまでは死ぬ気で頑張ります。
オリンピックはボート競技で出場することが1度叶わなかった大会なので、コンプレックスのようなものがあるかもしれません。競技をしている以上はオリンピックに出て、そこでトップになりたいと思いました。
(日本競輪選手)養成所にいる時は、オリンピックに出られるのは選ばれた人だけだと言われていました。そんな舞台を今目指せる立場にいて、望んでも必ずしも与えられる機会ではないことを考えると、とてもワクワクしますし責任感も感じます。「絶対に出てやりたい、1番速くなりたい」という気持ちが僕の原動力ですね。
Q:速いって気持ち良いですか?
めっっちゃ気持ち良いです!やばいです!悩みとかは何もなくなって最高ですね(笑)
本当に興奮が抑えきれなくなって出たのが、あのドラミングです(笑)
叫ぶだけじゃ足りないし、自転車の上ではジャンプとかできないので表現できることが少ないじゃないですか。
ネーションズカップ第1戦でジェフリー・ホーフラントに勝った時に、「この感情どうすれば良いんだ!?」ってなった時にあのドラミンングが初めて出てしまいました。リズムとかはなく、とにかく叩くだけですね(笑)
でも(太田)りゆさんとかも言ってましたね。「嬉しすぎると叩いちゃう」って(笑)
アジア選手権での目標は?
Q:『2023アジア選手権トラック』での目標を教えてください。
個人種目ではスプリントとケイリンに出ると決まっています。チームスプリントでは最近タイムが迫ってきている中国に勝ちたいです。まずは「日本がどんな状況でも絶対に勝つこと」を証明する。その上で日本記録の更新も狙っていきたいです。
個人種目のスプリントとケイリンでは、全日本選手権後にアジアの強い選手をイメージして練習してきました。ジェイソンコーチと話し合いをして、作戦も練っています。まだ最終段階ではありませんが、やっぱりアジア選手権では個人2種目でも優勝が目標です。
でも具体的には優勝したいというよりも、1つ1つの技術を磨いていくことが重要です。誰と対戦しても、どんなタイミングで仕掛けても勝てるように、1つ1つの精度を磨いて、その結果優勝したいです。
Q:アジア選手権の先を見ているからこその目標だと思います。
アジア選手権を世界選手権やオリンピックに向けた良い通過点にしたいと思っています。2022年のアジア選手権とは雰囲気が違うと思いますし、世界からも注目される大会なので、実力を出し切って勝ちたいと思います。
こわい40%、楽しみ60%
Q:通過点ということは、やはり2023年の最大の目標は世界選手権ですか?
はい。ネーションズカップでも強豪選手たちと戦いましたが、正直コンディションを合わせてきていない選手がいることも感じられました。2022年の世界選手権を経験したことで、特にオランダチームなどが力を温存している様子が見てわかりました。
2023年の世界選手権では万全のコンディションで来ることが想定されます。だからこそ僕たちも質の高い練習や生活を重ねてきました。2022年と同じ結果では終われません。
Q:プレッシャーより楽しみの方が大きいですか?
世界選手権は……、今考えただけでも鳥肌が立ってしまいましたが、こわい40%、楽しみ60%みたいな感覚です。でもとても楽しみですね。
他の国の選手がどれだけ仕上げてくるかも楽しみですが、僕たちがどれだけ仕上げていけるのかも楽しみですね。