「フィーリング」で走るハイスピードレース
Q:世界選手権の前には強豪選手のレースを事前に見たりしますか?
見ないです。ジェイソン(・ニブレット短距離ヘッドコーチ)からも「フィーリングで走れ」と言われます。「ケイリンは固定概念がない個人競技だから、フィーリングで走ることが大事だ」って言われました。スプリントではある程度、選手の癖みたいなものがあるかもしれませんが、所詮は「ある程度」です。
その代わりレース後にもらうフィードバックの量はすごいです。
Q:本当にジェイソンコーチには「フィーリングで走れ」ってアドバイスされるのですか?
はい。でも各選手の傾向は教えてくれます。でも傾向を聞いた後にどのように走るべきか聞くと、「フィーリングで行け!」と言われますね(笑)
私も他の選手にアドバイスする機会があっても、「感覚」と言ってしまうと思います。理論を詰めても私以外の他の選手には当てはまらないかもしれませんし、同じ展開になったとしても対戦相手に残っているHPとかも違いますし。
Q:HPですか?
はい。HPです。ケイリンはHPが残っているヤツが勝ちなので。
Q:ちなみに相手選手のHPは見えますか?
これも感覚ですが、見えます。「この選手はあとこれぐらいしかもたない」というのが、スピードや見た目で伝わってきます。
Q:時速60km〜70kmで走っている最中に、そんなことが見えて考えられるんですね。レース中、当の本人にはスローに見えているとか?
そうかもしれませんし、パッと見てわかることなのかもしれません。でも自分が先頭に行く時は、みんな(対戦相手)に「バイバイ」っていう気持ちで追い越します。
Q:ハイスピードレースの中で瞬時に考えることができるんですね。
自分が体験しているからこそできるのだと思います。逆に映像だとよくわかりません。自分が体験していないからよくわからなくて、的外れなことを言ってしまうことが多いです(笑)でも走っていればわかります。
Q:解説者には向いていなさそうですね……
なれないです(笑)
「アルカンシェル」へ辿り着くRPG
Q:2023年現在、佐藤選手は24歳です。『2023世界選手権トラック』やパリオリンピックでの結果次第とは思いますが、今後何年続けていきたいという目標はありますか?
目の前のことしか考えていないので、わからないです。
正直、今『パリオリンピック』と言われてもピンときません。それよりも目の前のことをクリアすることが重要だと思っています。目の前のことをクリアしないとオリンピックなんて出られませんし、段階的にクリアしていきたいです。
Q:RPGのような感覚ですね。レベル100が佐藤選手が目指すMAXだとすると、現時点での数値は?
レベル3です。ソードも何も持っていません。木の棒片手に、ジェイソンという名のチート機能を使って戦っています。そうやって行けるところまで行きたいです。
なのでまずは『2023アジア選手権トラック』でアジアチャンピオンジャージをキープして、そして『2023世界選手権トラック』でアルカンシェルを獲りたいです。